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最終更新:2022.11.28

脱炭素社会の構築へ、EVを活用した電力ビジネスの最前線

脱炭素社会の実現のため、EVの普及を目指す三井物産。その活動は、EVの導入支援のみならず、課題となる電力の供給・充電マネジメントも含めた総合的な取り組みとなっています。同社のEV関連事業について話を聞きました。

脱炭素化に欠かせない取組みの一つがEVの普及ですが、そこには見えない電力にかかわる課題が存在し、これをEVに搭載された電池により解決する新たなビジネスが生まれようとしています。ここでは、モビリティ産業と電力産業の融合を目指す企業「The Mobility House(ザ・モビリティハウス)」を紹介しながら、EV蓄電池を活用した電力ビジネスの可能性について語っていただきました。

電力供給から充電マネジメントまで、電力にかかわる課題を総合的に解決することでEVの普及を図る

──脱炭素社会の実現に向けて、三井物産がEVの普及に取り組むようになったきっかけをお聞かせください。
小野瀬 日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げています。日本のCO2排出量の約2割を占める自動車の排出ガスをEV化によって減らさなくては、この目標は達成できません。一方で、EV化によって走行時のCO2は削減されますが、EVが普及するほど電力需要が高まり、発電のグリーン化を同時に進めなければ、本質的なCO2の削減に繋がらないと言われています。このEV普及と発電のグリーン化を同時に解決していこうとするのが、三井物産のEV関連事業です。
──取り組みはいつから始まったのでしょう?
小野瀬 私が所属するモビリティ第一本部でEV関連の事業がスタートしたのが2010年で、EVおよびEV用電池システムを開発する「Lucid Motors(ルーシッド・モーターズ)」社(出資当時の社名はAtieva社) への投資が最初の案件でした。その後、2017年にはポルトガルでEV・FCVバスを製造する「CaetanoBus(カエタノバス)」社に出資しています。現在は、ZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)事業室として、EVを含むZEV関連事業の案件創出をおこなっています。
──EVの普及にあたって、課題となっていることを教えてください。
小野瀬 EVの導入とは、クルマを買うだけの話ではありません。ガソリン車の場合はガソリンスタンドに行けば給油ができますが、これをEVに切り替えた場合、その代替となるEV充電器が必要となります。さらには、充電が必要となれば、電力供給インフラにも課題が発生するのです。例えば、一か所にある複数のEV充電器で同時に充電しようとした場合、既存の電力設備では一時的に電力が不足して、充電ができないという問題が発生します。つまり、EV普及を一気に進めようとしても、電力供給がネックになるのです。
──では、三井物産が投資するThe Mobility Houseが、EV普及にどのような役割を果たすのか教えてください。
安保 The Mobility Houseのソリューションを活用すれば、充電を最適に制御することが可能になるので、既存の電力設備のアップグレードを回避、または最小化することができるようになります。また、電気料金は多くの場合、過去一定期間の最大受電容量に応じて設定されますので、最適な充電を行うことで電気料金の削減にも貢献できる可能性があるのです。
──具体的な事例はありますか?
安保 オランダのスキポール空港にThe Mobility Houseのソリューションが活用されています。スキポール空港は規模の大きなハブ空港で、空港と市街地を結ぶEVバスが約100台走っています。この充電を一度に行おうとしても電力設備が不十分で充電ができず、高コストな受電容量拡張工事が必要な状況でした。そこで、The Mobility Houseの「ChargePilot」を導入し、各車両の充電タイミング・充電量をコントロールし、年間の電力コストだけで5万ユーロ削減することに成功しています。

電力需給の調整役を担う「The Mobility House」

──EVを活用した電力ビジネスについて教えてください。
安保 電力産業では発送電分離が進んでいます。長年、地域割を続けてきた電気事業者による独占的環境を、自由かつ平等な環境に変えることで事業者間での競争を促すことを目的としたものです。その結果、これまでの一つの事業者が発電から小売までの商流全体を管理し、需要と供給の調整を担う体制が解消されて、調整機能を市場等で外部から調達する仕組みが出来上がろうとしています。
同時に、再生可能エネルギーの普及も加速度的に進んでいます。再生可能エネルギーの代表例は、太陽光発電、風力発電ですが、いずれも天候などによって出力が大きく変動します。他方で、電力需要動向は再生可能エネルギーの普及とは無関係で、大きく変わるわけではありません。従って、需要と供給の差を解消する調整力ニーズが今後さらに増加するというわけです。
この調整力として、昨今注目が集まっているのが蓄電池であり、これにEV用の蓄電池を活用しようと考えたのがThe Mobility Houseでした。
──電池がビジネスになる、ということでしょうか?
安保 その通りです。調整力ニーズは今後増加していくことが予想され、その調整力は市場等で取引されることになっています。つまり、蓄電池を上手く活用して調整力を提供するというビジネスになるのです。
EV化による電力需要の増加は必至であり、この電力の担い手として再生可能エネルギーがさらに普及することが、脱炭素化の実現に必要となります。その結果、電力需給調整のニーズが高まり、その調整役としてEVに搭載された蓄電池が活用される循環を生み出すことを目指しています。

V2G(Vehicle to Grid)の構築に向けて

──各EVを電力系統に接続し、EVの電池から双方向で電力をやり取りすることを「V2G(Vehicle to Grid)」と呼ぶそうですが、具体的にはどんなビジネスに発展するのでしょうか。
小野瀬 今後、EVが普及すれば、EV用電池がいたるところに点在するようになります。それらのEV電池を電力系統に接続し、仮想的に繋ぎ合わせれば、巨大な仮想発電所として電力の需給調整が可能となります。V2Gとはまさにそれを示す概念です。我々は、来たるV2Gの世界を見据えて、EV電池を活用した定置型蓄電池事業「ToKai2」をドイツにてThe Mobility Houseと連携して操業しています。
安保 ToKai2事業では、既に欧州で開設されている需給調整市場を通じて、電力系統向けに調整力サービスを提供しています。つまり、EVの電池を活用したビジネスが既にできており、V2G実現まであと一歩のところに来ていると考えています。

EV普及の促進と電力ビジネスへの発展

──EV化の促進が電力産業に与える影響は大きいのですね。そのようななか、三井物産が目指しているところを教えてください。
安保 EV車両の普及には電力分野の課題への対応が不可欠になります。このような課題解決とセットでEV車両導入に関わるあらゆる問題に対処するサービス提供を今後展開していきたいと考えています。
小野瀬 EVで先行する欧州では、新車販売台数に占めるEVの割合が10%を超えていますが、日本ではその割合は1%未満といわれています。欧州の先進事例を通して課題に先行対応し、日本でEV普及を加速させる。三井物産のグローバルネットワークと総合力を最大の強みとして、EV化、ひいては日本の脱炭素社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。
——本日はありがとうございました。

三井物産株式会社
エネルギーソリューション本部
New Downstream事業部
安保貴憲

2012年入社。入社後、エネルギー第一本部・第二本部戦略企画、LNG物流を経験。その後、旧ヘルスケア・サービス事業本部ファーマ事業部での製薬企業買収、創薬ファンド事業を担当。2018年より、エネルギー脱炭素分野における電力・エネルギーマネジメント分野に従事し、現在はEV充放電を活用した電力マネジメント領域に注力。

三井物産株式会社
モビリティ第一本部
次世代ソリューション事業部 ZEV事業室
小野瀨若葉

2017年入社。トラックの製造・販売事業、航空機リース事業、アイルランド子会社への出向を経て、現在はZEV事業室で脱炭素社会の実現に向けたEV・FCV等の事業開発を担当。同室は領域横断的に展開される事業の社内連携のハブとして、ZEV関連ソリューション提供機能を持つ。

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