Green&Circular 脱炭素ソリューション

ソリューション可視化

最終更新:2024.02.28

CO2排出量を自動で簡単に算出! e-dashが人気の理由

CO2排出量の可視化を軸に、エネルギーの最適化からCO2削減までを総合的にサポートするサービスプラットフォーム「e-dash(イーダッシュ)」が、大きな話題を呼んでいます。注目されている理由はどこにあるのでしょうか? 各企業が抱える悩みとともにe-dash株式会社 山崎冬馬社長に聞きました。

「e-dash(イーダッシュ)」は2021年10月にβ版をリリース。その後、2022年4月に正式リリースされ、企業や自治体から数多くの問い合わせを受けています。サービス開始に向けたヒアリングを重ねるなかで、「新しくできた脱炭素部署の担当者に指名されたが、どうしていいかわからない」という悩みを聞くことも多かったと言います。その受け皿となる脱炭素を加速するプラットフォーム「e-dash」。ここではそのサービスの概要とともに、企業や行政の悩み、脱炭素化の現状をe-dash株式会社 山崎冬馬代表取締役社長に聞きました。

脱炭素化に動き出す企業や行政の悩みを解決したい

――「e-dash」は脱炭素化の入口となるCO2排出量の可視化を簡単に実現できるソリューションです。そもそも、このサービスを立ち上げたきっかけを教えてください。
山崎 いろいろな企業とお話しをすると、「いよいよ脱炭素化に本気で取り組まなければいけない」という考えが共通認識としてあり、脱炭素化をCSRとしてではなく、事業戦略として捉え始めていることに気づきました。一方、脱炭素化を進めるといっても「何をしていいのかわからない」「排出量の把握にすごく手間がかかっている」という悩みもよく聞こえてきたんです。そこを解決したいというのが大きな理由でした。
――請求書をアップロードするだけで、CO2排出量を可視化できてしまうのは画期的です。同時に、月々の電力やガスなどの使用量やコストも管理できるわけですが、これは当初からあったアイデアなのでしょうか。
山崎 ユーザーへのインタビューやアンケート、プロトタイプの制作などをしながら、デザイン思考によるプロダクト開発をおこなっていきました。その中で、お客様にとってはデータを入力することが最大の手間だということがわかり、請求書をアップロードするだけという仕組みにたどり着きました。
――請求書といってもさまざまな種類があると思います。それを正確に読み取るのは難しいのではないでしょうか?
山崎 電力小売業者だけでも全国で700社程度あり、請求書の内容は同じであっても、フォーマットは各社ばらばらです。そのため、e-dashでカバーしているデータのすべてをOCR(光学文字認識)やAIのみで完全にデータ化することは難しく、人の手も介しながら正確にデータ化する仕組みを構築しています。
――エネルギーの種類でいうとどれくらいカバーしているのでしょう。
山崎 CO2排出量の算出にあたっては、電気、ガスはもちろん、灯油、重油、軽油、石炭など、あらゆる燃料を対象としています。水に関してはCO2排出に直接関係ありませんが、使用量やコストを一元管理したいという要望が多いため、水も管理できるようになっています。

Scope3(事業活動に関連する他社の排出)におけるCO2排出量の可視化にも対応

――CO2排出量の可視化は、GHGプロトコルにおけるサプライチェーン排出量(Scope1・2・3)をすべてカバーできると考えてよいのでしょうか?
山崎 請求書をアップロードするだけでScope1、Scope2のCO2排出量はすべて算出できます。Scope3(事業活動に関連する他社の排出)に関しては、請求書のアップロードのみでは難しいですが、システムに簡単な数値を入力いただければCO2排出量が算出できるモジュールを用意しています。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁
——企業における脱炭素化の取組み。特にその入口となるCO2排出量の可視化について状況を教えてください。
山崎 大きな流れとしては、東京証券取引所のコーポレートガバナンスコードが2021年6月に更新され、気候変動対策に関する情報開示が求められるようになりました。そこでは、企業の気候変動に関する情報を開示する国際的な枠組みである「TCFD」(*1)に沿った報告が求められています。この情報開示は義務ではありませんが、プライム市場(旧東証一部)に上場している企業に関しては「進めるべき」と書かれています。実は、似たような動きは米国でも欧州でも起きているので、いずれ世界的に義務化される可能性は高いと思われます。このような動きから、上場企業では早晩、気候変動に関するリスクを開示・報告するようになっていくと思います。
(*1) Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略。2015年4月に金融安定理事会(FSB)で設立された、気候関連財務情報開示タスクフォース。気候変動の影響を個々の企業が財務報告において公表することを求めた。
――そこでの考え方も、Scope1・2・3といった前述のサプライチェーン排出量に基づくものなのでしょうか。
山崎 はい。先ほどお話ししたように、プライム企業においてはScope 3のCO2排出量についても積極的な開示が求められています。そうなると、取引先の排出量も把握する必要がありますので、要請のあった取引先企業がCO2排出量の可視化を進め、さらにその先の取引先へと伝播している状況です。
――CO2排出量可視化の必要性は、プライム企業だけでなく、その取引先も含めた多くの企業で実感しているわけですね。
山崎 そうなんです。「e-dash」では正式リリースをおこなった2022年4月を機に、多くの企業や行政からご相談をいただいています。企業の脱炭素化への取組みは始まったばかりという状況の中、「突然担当者に指名されて困っている」という方が多くいらっしゃいます。

最初に取り組むべきCO2排出量の可視化を全国でサポート

――まさに2022年から大きく動き出したわけですね。「e-dash」では多くの金融機関と提携していますが、それはなぜでしょうか?
山崎 脱炭素社会の実現に向け、地域の企業がどのような経緯でどこから取り組んでいくのかを考えた時、金融機関の果たす役割はとても大きいのです。政府からの期待も高く、多くの金融機関の中期経営テーマには「脱炭素化」が盛り込まれています。その中身は「地域企業の脱炭素化を支援していく」というものです。その過程において、最初に求められるのがCO2排出量の可視化です。そのツールとして「e-dash」を金融機関の取引先へご提案いただいているということです。
――今後は中小企業を含めたさまざまな企業でニーズが生まれそうですね。
山崎 脱炭素化は限られた大企業だけの取り組みではありません。中小企業にも広く取り組んでいただけるよう、e-dashでは専門性の高いものではなく、誰でも簡単にCO2排出量が可視化できることにこだわっています。そのため、UI / UXを追求し、一方でさまざまなニーズに対応できるよう、お客様の声はもちろん、営業チーム、CS(カスタマーサクセス)チームからの声を拾いながら毎月アップデートを重ねています。

カスタマーサクセスによる、きめ細やかなサポートが強み

――ホームページには「コスト削減からCO2削減まで最適なご提案」とありますが、これはどのようなものなのでしょうか?
山崎 e-dashでは、可視化に留まらず、その先の排出量の削減まで支援しています。お客様によって課題はさまざまで、具体的にどう改善していくのかの施策に関しては経営判断も絡みますので、CS(カスタマーサクセス)チームがお客様とお話しをしながら進めていきます。脱炭素の文脈とは少し離れますが、電力価格の高騰に対しての相談があり、弊社からパートナー企業をご紹介し、電力の契約を切り替えた例もあります。脱炭素に関しては、今まさに各企業様とお話しを進めているところです。
――「e-dash」を導入して終わりではなく、カスタマーサクセスの方々が親身になって相談に乗ってくれるわけですね。
山崎 そこは強みのひとつでもあります。請求書をアップロードするだけで簡単にも見えますが、実際には入力するデータを社内のどこから引っ張ってくるかなど、企業によってさまざまな問題があり、削減活動も企業により異なります。CO2の可視化に関する細かい疑問はもちろん、削減に至るプロセスまで、しっかりとお客様と接しながら進めていきます。

眺めるだけでも楽しい、クレジットのマーケットプレイス

――カーボンオフセットに関しても、クレジットのマーケットプレイスという形でいち早くサービスを開始されました。
山崎 脱炭素化を広く皆さんに実行していただきたい、民主化したい、誰にでもリーチできるものにしたいという思いから生まれました。カーボンクレジットについては、すでにボランタリークレジット(民間主導のプロジェクトから発行されるクレジット)を買われている方もいらっしゃいますが、多くの人にとっては、どこに情報があって、どこに行けば買えるのか、そういったことがほとんど見えないですし、よくわからないですよね。そこをもっと透明性のあるものにしたいと思ったんです。
――サイトを見させていただきましたが、種類も多くて見ているだけで面白かったです。1トン1,000円台〜4万円を超えるものまであって価格も幅広いんですね。
山崎 そういう感想で今は十分です。まずは身近に感じていただきたいですね。一方、既に実際にご購入も頂いておりますし、企業のオフセットニーズからお問い合わせも多くいただいております。
――「e-dash」のようなサービスを、なぜ大企業である三井物産が始めるのかと疑問に感じている人もいるのではないかと思います。
山崎 世界のエネルギー産業では、「De-Carbonization(脱炭素化)」「Decentralization(分散化)」「Digitalization(デジタル化)」という「3D」を軸に、新たなビジネスモデルへの転換が進んでいます。三井物産もそれに合わせて変化していかなければなりません。分散化された世界では、さまざまな企業や団体と複合的な関わりを持つことが重要になっていきます。顧客をつなぐ、データをつなぐ、そのようなところに「e-dash」が貢献できること、大企業がこのようなサービスを提供することの意義があるのかなと感じています。

脱炭素への取り組みは、トレードオフからトレードオンへ

――最後に、脱炭素社会はどのように進んでいくと思われますか?
山崎 脱炭素化は、人によっては「流行り物」みたいな感覚があるかもしれませんが、そうではありません。地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)から約30年が経ち、その間に世界中でずっと議論されてきた課題です。国連レベルの枠組みも決まり、ついに本格的に動き始めたところです。冒頭にお話ししたように、脱炭素化は「事業戦略」のひとつであり、これに取り組まない企業は退場させられる時代になります。脱炭素化を「トレードオフ」と捉えるのではなく、「トレードオン」として積極的に取り組み、事業成長のドライバーにしていくことが重要になると考えています。
——本日はありがとうございました。

e-dash株式会社 代表取締役社長 山崎冬馬

2007年三井物産に入社。主に発電プロジェクト等の新規インフラ案件開発及びM&Aに従事。2015年〜2020年にシリコンバレーに駐在し、クリーンテック分野のスタートアップへの投資と共同事業開発を担当。帰国後「e-dash」を立上げ、現職。

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