Green&Circular 脱炭素ソリューション

ソリューション可視化

最終更新:2022.09.06

先進的脱炭素プラットフォーム「LCA Plus」が見据える未来

製品・サービス単位のCO2排出量が算定できる、脱炭素プラットフォームの「LCA Plus(エルシーエー プラス)」。世界的に見ても先駆的なソリューションの特徴や、「LCA Plus」が生まれた背景を担当者に聞きました。

製品・サービス単位のCO2排出量が算定できる、脱炭素プラットフォームの「LCA Plus(エルシーエー プラス)」。三井物産の新規事業として2020年後半に構想し、実証実験を重ねながら2022年8月1日にローンチされました。精緻にCO2排出量を可視化しながら管理ができる、世界的に見ても先駆的なサービスはどのように生まれたのか、またその特徴はどこにあるのかについて、4名の担当者に話を聞きました。

「ゆりかごから墓場まで」製品・サービス単位のCO2排出量を可視化

――LCA(ライフサイクルアセスメント)は製品・サービス単位のCO2排出量ということですが、その考え方を簡単に教えていただけますか?
長谷川 目の前にあるパソコンを例に取りますと、ここで使われている部品ひとつひとつの原材料調達、加工、組み立て、製品化、消費者によるパソコンの利用、廃棄やリサイクルに至るまで、さらに各工程間での輸送も含めた一連の流れを「ライフサイクル」と呼びます。「ゆりかごから墓場まで」とよく表現されますが、各工程でどれくらいのCO2が排出されているのかを細かく算定していくのがLCAの考え方です。
三井物産株式会社 鉄鋼製品本部 戦略企画室 室長補佐 長谷川 明彦。2020年にキャリア入社。前職では事業開発やコンサルティングを担当。「幸いにして他社に先んじてサービスを展開することができました。フロアも違い、席も離れているなかで部署間を連携しながらサービスを立ち上げるのは面白くもあり、苦労もありました」
――GHGプロトコルで定められている、サプライチェーン排出量(Scope1・2・3)との違いはどこにあるのでしょうか?
長谷川 GHGプロトコルにおけるScope1・2・3においても、原材料の調達から製品の廃棄・リサイクルに至るまでのCO2排出量を計算し、弊社では「e-dash」で算定サービスをご提供していますが、その対象は事業所や企業単位となっています。これに対して、LCAは製品やサービス単位での排出量を可視化するところに違いがあります。
現在、サプライチェーン排出量の可視化に取り組む企業が増えてきていますが、さまざまな企業にヒアリングをしていると、事業所や企業単位でのCO2排出量の算定に加え、製品単位での可視化ニーズが高いことが分かってきました。
——なぜ製品あたりの可視化ニーズが高いのでしょうか?
長谷川 事業所または企業単位でのCO2排出量の算定は、会計データなどを用いて概算として算出されます。多くはCO2排出量の「開示・報告を目的」としていることもあり、自社製品においてどこでどれくらいのCO2が排出されているかの特定までは致しません。一方で、一部の業界や企業では、サプライチェーンを跨っての製品あたりの算定報告が始まっており、「CO2削減アクションを実際に行っていく目的」と、「製品・サービス開発競争力確保のため」に製品あたりの可視化ニーズが高まってきております。
——そういった声をもとにLCA Plusが生まれたわけですね。
北田 私はもともとプラスチック素材を扱っていましたが、コロナ禍以前の2019年頃から、とくにヨーロッパの自動車メーカーから「製品ごとにCO2排出量を出してください」という要望が出始めるようになりました。最初はよくわからないまま勉強をして、仕入先の化学メーカーにも相談しました。そのときに彼らも対応に困っていたんですね。
一方、鉄鋼製品本部においても、取引先である自動車メーカーから同様の要望があり、サプライヤーはそれにどう対応するか悩んでいたわけです。このように、同じ時期に、複数のサプライヤーが「CO2排出量の算定方法が分からない」と悩んでいる状況をみて、「これはビジネスチャンスなのでは?」と思うようになったのが2019~2020年頃でした。
三井物産株式会社 パフォーマンスマテリアルズ本部 機能材料事業部 工業材料事業室 室長補佐 北田 修平。2010年入社。自動車を中心とした化学品、プラスチックを主に扱ってきた。「DXという新しい領域に挑戦できたことは喜びです。まだまだ勉強することは多いですが、積極的にチャレンジしていきたいです」
佐久間 このビジネスチャンスを捉えるべく、事業化の検討をはじめた矢先に、菅元首相が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」と宣言されたことも追い風となりました。
三井物産株式会社 鉄鋼製品本部 次世代事業開発部 グリーンスチールイニシアチブ推進室 佐久間 友里乃。2010年入社。これまで、ブリキや薄板系の輸出業務を中心におこなってきた。「小さい頃から環境問題を意識し、ビジネスでも環境に携わりたいと思ってきました。2020年にDXタスクフォースで脱炭素プラットフォームの事業化に向けたチームメンバー募集がかかった際、これはチャンスだと思い参加しました」
――異なるふたつの部署が共同で事業を立ち上げるというのは珍しいケースですね。
長谷川 着眼点が共通していたことはもちろんですが、いずれの事業本部も素材を扱う本部であり、顧客からCO2排出量の算定を求められて悩んでいたという点で、共鳴しました。

メーカーもサプライヤーもLCA算定に困っていた

――具体的な悩みを教えてください。
長谷川 自動車を例にしますと、車1台を作るにあたっては何万点という数の部品が使われています。自動車メーカーとしては、その管理はもちろん、CO2排出に関する各サプライヤーの対応の差に悩みを持たれていました。
逆に、サプライヤーにとっては、精緻にCO2排出量を出すためには原料や素材調達などを遡って計算する必要があります。それを自社でやるべきなのか、そもそもやり方がわからないなど、メーカーからの要望にどのように対応すれば良いのかを悩まれていました。「LCA Plus」はその間をつなぐプラットフォームを提供していくサービスです。
――LCA算定に関するプラットフォーム事業において、競合他社はいるのでしょうか?
長谷川 今のところ国内で1社、世界的にも1社という認識です。かなり少ない、もしくはないに等しいと思います。一方、競合が少ないということはマーケットとしてまだ注目されていない可能性もあり、マーケットとしての今後の広がりを我々も考えていかなければなりません。
――LCA算定の動きが、どれくらい広がるのかわからないということですか?
長谷川 現時点で企業に求められているのは、どれくらいのCO2排出量があるかを事業や企業単位で概算することです。しかし、それでは脱炭素化に向けた具体的なアクションが描きにくいわけです。一方、ISO規格に準じる精緻な排出量の算定が本当に必要かについて、疑問を持たれている企業もあります。
LCAが普及していくためには、多くの企業が精緻な排出量を算定する必要性を認識し、その中でLCAの考え方やアプローチがデファクトスタンダード化して「市民権」を得ていくことが必要ではないかと考えています。
――脱炭素に関心のある方は「LCA」という言葉をよく目にすると思いますが、具体的な動きとしては始まったばかりなんですね。
長谷川 すでに取り組みを始められている企業ももちろんありますが、多くの企業はまだ悩んでいる状況です。2021年に行った「LCA Plus」の実証実験においては、自動車業界の大企業から中小企業まで26社に参加いただき、代表的な製品の排出量の算定を試行錯誤しました。そこで各社が悩まれていた箇所をひとつずつクリアにしていきました。

LCA算定方法をSuMPO(一般社団法人サステナブル経営推進機構)と共同開発

――LCAの算定方法はすでに決まりがあるのでしょうか?
長谷川 大きなところでは、ISO14000環境マネジメントシリーズによって定義はされています。しかし、ISOの中には具体的な算定方法やガイドラインまでは示されておらず、「こうするのが望ましい」といった表現にとどまっています。
「LCA Plus」に関しては、国内で唯一のカーボンフットプリント認証機関である「SuMPO(一般社団法人サステナブル経営推進機構)」と共同開発することで、ISOに基づく具体的なLCA算定方法(ガイドライン)を提示しています。
眞鍋 ガイドラインとしては、ISOに準じた環境ラベルの認証プログラム「EPD(タイプⅢ環境宣言)」を各国が持っています。日本ではSuMPOさんが発行する「エコリーフ」がそれに該当しますが、「LCA Plus」で提示したガイドラインは、その基準を参考にしたガイドラインになっています。ですから、SuMPOさんで「エコリーフ」のラベル認証を受ける際には、「LCA Plus」のデータをご活用頂くことができます。
三井物産株式会社 パフォーマンスマテリアルズ本部 機能材料事業部 ポリオレフィン事業室 眞鍋 悠。2018年入社。プラスチック原料の輸出・三国間の物流サポートを主に担当してきた。「LCAやウェブ制作、PR動画など新しい知見を得るのは大変ですが、多くのお客様と直接お話する機会も増え、やりがいも大きいです」
――今後「LCA Plus」が国内の基準になっていくと考えていいですか?
長谷川 国内はもちろん、最終的にはグローバルでのデファクトスタンダード化を目標の一つとしています。先ほど「市民権」という言葉を使いましたが、国内においては省庁や業界団体など、企業だけでなく関連する団体とも渉外活動をおこなっています。
――海外の動向も見ながら、国内での普及活動を進めて行っているわけですね。サービスを開始されるまでに苦労された点はどんなところでしょうか?
長谷川 お客様の声を聞いて感じたことは、最初の1歩を踏み出すことへの不安でした。「LCA Plus」においては、国内唯一のカーボンフットプリント認証機関である「SuMPO」と共同開発している点を信頼性としてアピールしていますが、今後どのサービスやプラットフォームがフロントランナーになるかわからない状況の中で、「LCA Plus」の利用をすぐに決断いただける企業は少ない状況でした。
北田 CO2排出量の可視化、さらにはLCA算定の必要性が現場まで浸透していない現状も感じました。実際にデータを入力して排出量を算定するのは、各製品の営業・開発担当だったり、工場の方だったりします。その方たちにLCA算定の必要性をご理解いただくことが難しいところだと思っています。
佐久間 サービス面に関しては、LCAに関する習熟度によって理解の仕方、見え方も変わってきます。初心者から専門家まで、利用されるすべての方にとって使いやすいものとなるように、また一定の品質を保てるようにバランスを取っていくところに苦心しました。
眞鍋 サービスサイトの作成にあたっては、まさにいろいろな習熟度の方がいらっしゃる中で、どのようにアプローチすべきかが難しいところでした。パリ協定などの脱炭素に関する基本的なことを知りたい方もいらっしゃいますし、具体的なシステムの中身について知りたい方もいらっしゃいます。親しみやすいキャッチーなビジュアルと、専門性を兼ね備えたサイトデザインには苦労しました。

各製品の製造レシピと素材・エネルギーの使用量を知ることが最初の一歩

――「LCA Plus」を導入後、担当者はまず何をすればよいのでしょうか?
北田 サンプルをお見せすると、ある自動車のバンパーのCO2排出量は13kgとなりました。これを計算するにあたっては、必要なデータがExcelで整理されていれば、それをアップロードするだけでまとめて計算することができます。
ひとつずつ入力する場合では、まずは使っている材料名と使用量を入れます。そうすると、各材料のCO2排出原単位が「LCA Plus」に実装されているので、それを自動的に紐づけて計算が行われます。
――原単位とはどういうものでしょうか?
北田 原単位とはCO2排出係数のことで、例えば、鉄1kgを作るために排出されるCO2の量を示しています。「LCA Plus」に実装しているのは、日本の有力な原単位データベースである「IDEA(イデア)」と呼ばれるものです。そこには日本の排出量平均値が入っているので、どのメーカーで作られたかは関係なく、CO2排出量の平均値を出すことができます。
――平均値で問題ないのですね。
北田 「IDEA」が出している平均値を二次データと呼んでいますが、「LCA Plus」ではサプライヤーから提供されるリアルなデータ(一次データ)で計算していただくことも可能で、どちらを利用するかを選択することができます。一次データのほうが精緻な計算が可能ですが、データ収集の手間などもありますので、「まずは二次データを使って計算してみる」ことが、現時点では標準的なアプローチだといえます。
――なるほど。では、担当者がすべきことはまず、製品の製造レシピと素材・エネルギーの使用量を知ることですね。
北田 はい、その通りです。初期段階として、まずそこを把握するのが大変なのです。
――海外工場を持たれている企業も多いと思いますが、海外にも対応していますか?
北田 グローバルでの展開も視野に入れています。CO2排出原単位のデータベース「IDEA」は日本の平均値を示すものであり、海外で排出量を算出する場合には、「IDEA」とは別の原単位データベースが必要になる場合があります。その場合は、お客様側でインプットいただければご使用いただけます。
将来的には、海外の原単位データベースも「LCA Plus」に実装する方向で協議しています。
――LCAを算定後、削減のアクションを描く際にはどのように検討していけばいいのでしょうか?
北田 「LCA Plus」では、使用されている材料や工程ごとのCO2排出量を算定し、排出量の大きいトップ5が表示されますので、CO2排出量の多い材料に対して具体的な削減アクションを考えていくことができます。
さきほどのバンパーの例でいえば、もっとも排出量が多いのは、アルミとなっています。この場合、アルミの使用量を減らす、別の材料に変更する、製造時の工場電力を抑制するといった排出量削減策を検討し、それを実施したときの削減量のシミュレーションをおこなうことができます。

将来的には「LCA Plus」のなかでさまざまなビジネスが生まれる

――今後はCO2排出量削減に関する提案が充実していくと考えていいですか。
長谷川 ダイエットと同じように計算結果を見て終わりではなく、具体的なアクションをおこし、それを継続していかなくてはなりません。まずは、CO2排出量が多く削減余地の大きいホットスポットが生まれる原因追求が大切になります。原因が特定できれば削減アクションを考えることができます。その際に、三井物産の総合力を活かしたさまざまな削減提案や事業展開をサポートすることも可能だと考えています。
――将来的には、CO2排出量の少ない部材や部品が、「LCA Plus」上で広告・PRされる可能性もありそうですね。
長谷川 既に「このプラットフォーム上で低炭素素材や材料を探したい」というお声をいただいています。将来的には「LCA Plus」を通して企業がマッチングし、そのなかでさまざまなビジネスが活性化していけばと思っています。

充実したカスタマーサポート体制で安心

――お客様サポートに関しては、どのような対応をされるのでしょうか?
長谷川 プラットフォームの機能的サポート、サービスセンター、カスタマーサクセスの3つのサポートを行います。機能的サポートでは、お客様の既存システムと連携する機能を実装し、ストレスなく簡便にお使いいただけるよう、システム的なサポートを提供します。サービスセンターでは、SuMPOさんと共同で、有人チャットを併設したコールセンター機能を提供し、LCA Plusの利用サポートを行います。カスタマーサクセスでは、ご契約いただいた企業様のCO2排出量削減のサポートを、対面を中心に進めていきます。
「LCA Plus」では、ツールの提供にとどまらず、お客様がCO2排出量削減を実現できるよう、サポート体制を整えています。
――最後に、「LCA Plus」を通して実現したいことはありますか?
長谷川 CO2排出量を算定する際に担当者が直面する困りごとは、「算定方法が分からない」「データの収集方法が分からない」「計算が正しいかどうかが分からない」ということです。
「LCA Plus」では簡便かつ正確なCO2排出量の算定が可能であり、これを通して具体的な削減アクションの想起が可能となります。「LCA Plus」の簡便さが、脱炭素化に向けた一歩を踏み出すきっかけになればと考えています。
――本日はありがとうございました。

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