パリ協定とは?脱炭素に関する日本の取り組みと現在地をわかりやすく解説
18世紀半ばに起こった産業革命は、人びとに豊かな暮らしをもたらすことと引き換えに大きな環境問題を引き起こし、この環境問題への対処は、今や世界共通の課題となっています。
そのような中、各国が一丸となって気候変動に取り組むための枠組みとして採択された「パリ協定」。この記事では「パリ協定」の概要を解説し、日本を含む各国の目標・取り組みと現在地についてご紹介します。
パリ協定とは、気候変動対策の国際的な枠組み
パリ協定における気候変動対策の長期目標
パリ協定とは、2015年11月30日から12月13日までの期間にパリ郊外で実施された「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」にて採択された国際条約です。気候変動に関する国際的な目標・取り組みが定められ、2016年11月4日に発効されました。
パリ協定においては、長期的な目標として、
【世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する】
こと、またそのために、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる、即ちカーボンニュートラルを実現することが定められ、これが世界共通の目標となっています。
これらの目標を達成するため、2020年から各国が取り組むべき検討・支援などが国際的な枠組みとして示されています。気候変動枠組条約には、世界196カ国が加盟しています。パリ協定は、この加盟国すべてが参加する史上初の協定です。日本も参加国のひとつとして批准しています。
京都議定書からパリ協定へ
気候変動対策に関する初の国際合意は、1997年に採択された京都議定書です。
京都議定書では、先進国に対し、2008年~2012年の対象期間における温室効果ガスの排出削減が義務付けられました。必要な削減量は国ごとに設定され、日本の場合は、1990年比で6%の排出削減が義務付けられました。
京都議定書以来18年ぶりの協定となりますが、パリ協定は開発途上国を含むすべての参加国・地域に温室効果ガスの排出削減が求められています。その背景には、京都議定書以降、大きく経済成長した新興国にも相当量の温室効果ガス排出があること、先進国のみに削減を課す不公平感への配慮などがあります。また、その削減目標は各国が自主的に設定するボトムアップ方式が採用されています。
パリ協定を受けた日本や各国の目標
各国が自主的に削減目標を設定
パリ協定で定められた長期目標は、【世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する】ことであり、またそのために、21世紀後半には、カーボンニュートラルを実現することです。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 第5次評価報告書によると、世界目標である気温上昇を1.5℃に抑えるためには、2050年でのカーボンニュートラル実現が必要であることが示されています。
これを受けて、各国が排出削減目標を定め、温室効果ガスの削減を進めています。パリ協定では、自国の削減目標を自主的に定めるボトムアップ方式の目標設定が行われているため、目標達成のための具体的な施策については定められていませんが、各国には「自国が決定する削減目標(NDC:Nationally Determined Contribution)」を、2020年以降、5年ごとに提出することが義務付けられています。また、先進国に関しては、途上国に対し金銭的・技術的サポートを行うことも求められます。
このように、パリ協定は気候変動対策の大枠を定めたものであり、目標を実現するための施策は各国で異なります。以下で、日本を含めた各国の取り組みを紹介します。
日本の「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」
日本では、2030年度の温室効果ガスの排出を、2013年度を基準として26%削減することを中期目標として定めました。これがパリ協定において日本が国際的に約束した温室効果ガスの削減量ということになります。
パリ協定をうけ、菅義偉(当時首相)は、2020年の所信表明演説において、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言。2021年10月には「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定されています。
本戦略においては、2050年カーボンニュートラルを目指すとし、またその過程において、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減する「野心的な」中間目標を設定、カーボンニュートラル実現に向けたあるべき姿をビジョンとして示しています。
パリ協定に基づく各国の削減目標
パリ協定では、温室効果ガスの削減目標を各国が自主的に定めるため、基準年の違いなどにより単純比較が難しい側面がありますが、主要国の排出削減目標を紹介します。
資源エネルギー庁、JETROより引用編集
パリ協定その後:各国の排出削減の進捗状況
「パリ協定からの離脱」より一転、米国が気候変動対策を積極化
当時のドナルド・トランプ前米国大統領は、パリ協定は米国に不利益であるとして、2020年11月にパリ協定から離脱しています。温室効果ガスの排出量が世界で2番目に多い米国の不参加、これによる途上国への資金・技術供与などの面で、世界の気候変動対策に大きな懸念を与えました。その後2021年、バイデン大統領により米国はパリ協定に復帰、バイデン氏は気候変動サミットを開催するなど、気候変動対策に積極的な姿勢を見せています。
気候変動サミットでは、米国が従来の削減目標「2025年に26~28%のGHG削減(2005年比)」を「2030年に50~52%のGHG削減(2005年比)」に上方修正し、気候変動対策への積極的な姿勢を示しています。またこれに伴い、一部の国が削減目標(NDC)を修正する意向を示しています。
COP26で示された気候変動対策への強い懸念と目標修正の必要性
各国の温室効果ガス削減目標(NDC)、これを合算しても気温上昇を1.5℃に抑えるには程遠く、COP26では、現状の2030年目標を「野心的な」数値に見直し、再提出することが各国に要請されました。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、気温上昇を1.5℃に抑えるためには、2050年にカーボンニュートラルを実現する必要があり、またその過程で2030年には45%の排出削減(2010年比)が必要であるとされています。
2050年カーボンニュートラル達成に向けて
パリ協定を大きな契機として、各国が温室効果ガスの排出削減に取り組んでいますが、2050年カーボンニュートラル実現に向けて各国が削減目標を野心的に修正し、これまで以上に脱炭素化に向けた取り組みが強化されることが望まれています。
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