地域脱炭素ロードマップとは?全体像や具体的な取り組みを解説! - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

コラム

最終更新:2024.09.24

地域脱炭素ロードマップとは?全体像や具体的な取り組みを解説!

近年、脱炭素に向けた各国の政策や、技術の開発が大きく取り沙汰されています。しかし、実際に「脱炭素社会」を実現するのは、国でも技術者でもなく、地方自治体とそこに住む私たち一人ひとりです。
地方自治体の意識を高め、協力して脱炭素社会を実現するため、政府は「地域脱炭素ロードマップ」を策定しました。この記事では、この「地域脱炭素ロードマップ」について詳しく解説してきます。

地域脱炭素ロードマップとは?

2020年10月、菅前総理は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。加えて、2030年までの目標として、2013年度比で 46% の削減目標を定めました。こうした目標実現のために、国としても様々な政策立案を進めています。
脱炭素を推進する恩恵は、地球環境を改善することだけに留まりません。地域の PR活動や、活性化策としても活用できます。地方自治体としては、脱炭素事業に対して国から補助金が出ることで、従来型の不健全な産業構造から脱却するチャンスです。
脱炭素を推進する中で生まれた新たな産業は、雇用をも生みだします。犯罪率の増加や、自殺、公害、人手不足など、地域ごとの問題を脱炭素事業と結び付ければ、一挙に解決できる可能性も秘めています。
こうした地域ごとの取り組みは、地域が主体となって推進することが望まれます。なぜなら、地域の問題や、その地域の資産は、そこに住む住民や自治体が一番分かっているからです。
国は全国の自治体に、自主的に脱炭素社会実現のための取り組みを進められるよう、経済的支援を継続的に行っています。
ただ、政府も脱炭素のためのイニシアティブの策定、予算の設定を進めていますが、地域の活動にどうやって落とし込んでいくのか、という点についてはまだまだ手探り状態です。自治体も、国からの支援があっても、何をしたらよいのか分からず、暗中模索している状態です。
何をすればよいか分からない自治体に対して考えたのが「モデルケース作り」です。成功した自治体をモデルとして、他の自治体の取り組みも改善されることが期待できます。自治体と国とが連携して脱炭素社会を推進することで、地域に固有の問題も解決し、活性化へ繋がった、という「お手本」を作ろうとしました。
政府が自治体へ示した指針である「地域脱炭素ロードマップ」は、この「モデルケース作り」が軸として構築されています。
以下で、この地域脱炭素ロードマップについて、より詳しく解説します。

地域脱炭素ロードマップの目標と全体像

地域脱炭素ロードマップは大まかに分けると 2ステップから構成されます。
2030年までの第1ステップでは、モデルケースとなる 100箇所以上の「脱炭素先行地域」を作ります。続く 2050年までの第2ステップで、これを横方向に拡散していきます。これによって、政府が「脱炭素ドミノ」と呼ぶ脱炭素社会推進の動きが全国で活発化することが狙いです。
最終的に、2050年を待たず、カーボンニュートラル(実質的な温室効果ガス排出ゼロ)を実現することを目指します。

地域脱炭素ロードマップの重点対策

政府は、地方自治体が主体的に脱炭素社会実現のための事業を推進するうえで、「どのような事業を推進して欲しいか」という点に関して、大まかな指針を示しています。
それが以下に示す、「重点対策」です。
- 屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
- 地域共生・地域裨益型再エネの立地
- 公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと、再エネ電気の調達と更新や改修時のZEB化への誘導
- 住宅・建築物の省エネ性能等の向上
- ゼロカーボン・ドライブ(再エネ × EV / PHEV / FCV)
- 資源循環の高度化を通じた循環経済への移行
- コンパクト・プラス・ネットワーク※等による脱炭素型まちづくり
- 食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立
※コンパクト・プラス・ネットワーク:人口減少で生活サービス機能が失われることを防ぐため、居住地や都市機能を密集させ、効率化を図る(コンパクト)。それと連携して公共交通ネットワークを再構築すること(+ ネットワーク)。

ZEBについては「ZEB(ゼブ)とは?メリットや導入事例をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
上記のような事業を、地域の特色と結び付けて実行していく地域を、国は高く評価します。
では、国は、地域の脱炭素事業をどのように支援してくれるのでしょうか。ここからは地域脱炭素ロードマップの基礎的施策について説明します。

地域脱炭素ロードマップの3つの基盤的施策

地域脱炭素ロードマップの基盤的施策とは、脱炭素先行地域作りや、その後の活動を支援するため、「国が行う施策」です。
この基盤的施策は、以下の3つからなります。
- 地域の実施体制構築と国の積極支援のメカニズム構築
- グリーン×デジタルによるライフスタイルイノベーション
- 社会全体を脱炭素に向けるルールのイノベーション

以下でそれぞれの施策について説明します。

地域の実施体制構築と国の積極支援のメカニズム構築

「地域の実施体制構築と国の積極支援のメカニズム構築」とは要するに、「地域と国が連携できる仕組みを作ります」ということです。
脱炭素実現のためには、地域の環境・エネルギー部局のみならず、企画振興や商工・農林水産業・土木等の関係部局の参加が不可欠で、金融機関や、中核企業等を組み込んだ体制を構築しなければなりません。ここに、政府や大学・各研究機関が人材や知見、資金を提供し、脱炭素を進めていきます。
こうした連携の構築をサポートするために、国としても様々な活動を実施します。例えば、地域の要望に応じた人材の派遣やDX の支援、環境アセスメントデータベースの拡充などです。

グリーン×デジタルによるライフスタイルイノベーション

デジタル技術の活用、導入推進を通じて、国民が日々の生活の中で、自然と脱炭素に貢献できる社会の実現を目指します。また、温室効果ガス排出を「見える化」することで、脱炭素への貢献を意識できる仕組み作りを進めます。
具体的には、消費期限の近い食品に対して割引を実施し、食品ロスを低減する活動へのインセンティブの付与や、ふるさと納税の返礼品として、地域再エネの活用などが挙げられます。

社会全体を脱炭素に向けるルールのイノベーション

風力発電施設や太陽光パネルを設置した住宅の建設には、時間を要します。加えて、現状では、こうした再生エネルギー発電施設に対するメリットが少なく、脱炭素への高い意識を持った国民以外から支持を得られていません。
国としては、更なる制度改革を通して、上記のような事業の実効性を高めていく狙いがあり、再生エネルギーに留まらず、脱炭素に貢献するまちづくり、産業、リサイクルの振興などには、これまで以上に高いインセンティブが付けられることが予想されます。
地域脱炭素ロードマップでは、地域脱炭素実現のモデルケースを打ち立てようとする考え方をベースにしています。
これは、地球全体の脱炭素化に貢献するだけでなく、地方自治体にとって大きなチャンスとなり得る施策で、今後この地域脱酸素ロードマップを基に、地域が活性化されることが期待されています。

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