ESGとSDGsの具体的な違いとは?それぞれの概要と関係性も解説 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

コラム

最終更新:2024.09.24

ESGとSDGsの具体的な違いとは?それぞれの概要と関係性も解説

ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字であり、これらの観点から企業経営をすることで、投資家のからの資金調達に有利に働くことがあり、企業イメージの向上につながります。SDGsは国連総会で採択された、世界をより良い方向へ動かすための行動指針であり、ESGとも多くの共通点があります。この記事では、SDGsとは何か、ESGとは何か、両者の違いや関係、企業や投資家にとってのメリットについて詳しく解説します。

SDGsとESGとはどんなもの?

SDGsは国連総会で採択された、「より良い世界を目指すために行うべき国際的な行動指針」です。一方、ESGは投資家が投資判断をする指針の1つであり、企業が安定的な成長をするための重要な観点です。ここからはSDGsとESGについて詳しく解説します。

SDGsとは

SDGsとは、2015年の国連総会で採択された行動計画です。「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。名前の通り、持続可能な開発のために採択された国際的な開発目標であり、より良い世界を目指すための17の世界的目標と169の達成目標が掲げられています。SDGsは、2015年に終了したミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)が土台にあり、MDGsの目標を踏襲しており、SDGsの達成目標は2030年で、日本でもSDGs推進本部が設置されるなど、積極的な取り組みが進んでいます。
No. 詳細
1 貧困(No Poverty)あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる
2 飢餓(Zero Hunger)飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する
3 保健(Good Health and Well-Being)あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
4 教育(Quality Education)すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
5 ジェンダー(Gender Equality)ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う
6 水・衛生(Clean Water and Sanitation)すべての人々の水の衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
7 エネルギー (Affordable and Clean Energy)すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
8 経済成長と雇用(Decent Work and Economic Growth)包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
9 インフラ、産業化、イノベーション(Industry, Innovation, and Infrastructure)強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
10 不平等(Reduced Inequalities)国内及び各国家間の不平等を是正する
11 持続可能な都市(Sustainable Cities and Communities)包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
12 持続可能な消費と生産(Responsible Consumption and Production)持続可能な消費生産形態を確保する
13 気候変動(Climate Action)気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
14 海洋資源(Life Below Water)持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
15 陸上資源(Life on Land)陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
16 平和(Peace, Justice and Strong Institutions)持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
17 実施手段(Partnerships)持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
参考:持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組(PDF)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/SDGs_pamphlet.pdf

ESGとは

ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉です。2006年に、当時の国際連合事務総長コフィー・アナン氏が、金融業界に対して責任投資原則(PRI)を提唱しました。この責任投資原則の中で、投資と企業の経営においてESGについて考慮すべきだと示しています。これがきっかけとなり、責任投資原則及びESGの概念が普及し始めました。
責任投資原則の概要は以下の通りです。

- 投資家は投資の意思決定にESGを考慮する
- 投資家は投資先にESGを考慮した経営をするように求める
- 投資家は企業などに対してESG情報の開示を求める
- この原則が資産運用業界で受け入れられ、実行されるように働きかける
- この原則の効果を高めるために協働する
- この原則の活動状況や進捗状況に関して報告する
従来の投資家は、業績や財務状況の分析のみによって投資判断を行っていました。しかし近年、企業の安定的な成長にはESGの観点から企業価値を分析し、事業リスクなどを把握する必要があるという考え方が広まっています。このようにESGを考慮した投資判断が普及してきており、投資家が将来の企業価値を測る重要な指針になっています。
環境Environment 再生可能エネルギーの使用などの脱炭素、水質汚染対策、リサイクルなど
社会Social 労働災害対策、人材育成、労働安全性の確保、地域社会への貢献など
ガバナンスGovernance 業績悪化に直結する不祥事の回避、リスク管理のための情報開示や法令順守など

SDGsとESGの違いと関係性を解説

先述の通り、SDGsは国連総会で採択されたもので、より良い世界を召さずための行動目標です。一方、ESGは民間企業と投資家が、投資判断や企業経営の指標とするもので、長期的な成長戦略として注目されており、投資家は企業の長期的な成長可能性を判断するため、企業は自社の長期的成長と投資家の金銭的支援を得るためにESGに取り組んでいます。
ESGの環境(Environment)と社会(Social)にはSDGsと多くの共通点がありますが、ガバナンス(Governance)は企業の管理体制に関するものですから、環境・社会ほど関係性は高くありません。SDGsの主体は国連や各国の政府であり、それらの機関が働きかけることで、世界中の企業や団体、個人に影響を与えています。ESGの主体は投資家と民間企業ですが、企業のSDGs取り組みへの評価基準として、ESGスコアが用いられることもあります。ESGは企業活動を非財務面から図る重要な指標として、多く企業がESGの情報開示を行っています。

SDGsとESG投資の関係性

企業はSDGsの重要な担い手であり、政府や国連の働きかけにより、SDGsが設定する目標を経営戦略に反映させる企業が増えています。同時に、投資家間でもESGを重視した投資判断がなされるようになってきており、企業もESGの視点から事業活動を展開しています。
ESGとSDGsには共通点も多く、ESGに注目した事業活動がSDGsの達成にも繋がり、投資価値や企業価値が向上します。このように、社会貢献やCSRから、ESGへの取組み自体が利益に繋がるという「ニュー資本主義」の考え方が広がっています。

SDGsとESGに企業が取り組むメリットとは?

SDGsやESGに取り組むことで、社会問題に取り組んでいる企業として、企業イメージの向上につながり、また近年、投資判断にESGの観点を重視する「ESG投資」が広まっていることから、資金調達に有利に働きます。
ユニリーバはESGや長期的な成長戦略を積極的に取り入れ、企業価値を大きく向上させた好例です。2009年1月にユニリーバCEOに就任したポール・ポールマン氏は、廃棄物を極力ださないことや、労働環境の改善に努め、取締役会への女性の参画も進めました。10年間のポールマン氏の在任中、ユニリーバの株価は2倍以上になり、市場にも受け入れられました。

投資家にとってのメリット

SDGsやESGに積極的に取り組んでいる企業に投資することで、投資家は持続可能な社会に貢献でき、ESGの概念は企業の長期的な成長につながります。そのため、ESG投資は長期的な資産形成に向いており、長期的なリターンが期待できます。
SDGsとESGには多くの共通点がありますが、SDGsは国連や各国政府が主体となり企業や団体、個人へ働きかける取り組みであり、ESGの主体は民間企業と投資家です。企業がESGに取り組むことで、SDGsの達成にも繋がり、社会貢献による企業イメージの向上や投資価値の増大など、企業にとっても多くのメリットがあります。

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