グリーンボンドとは?原則に加え、発行や投資をするメリット・デメリットを紹介! - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

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コラム

最終更新:2024.02.02

グリーンボンドとは?原則に加え、発行や投資をするメリット・デメリットを紹介!

グリーンボンドは、環境問題の解決に貢献するために、自治体や企業が発行する債券です。グリーンボンドにより企業は資金調達に有利に働くというメリットがあり、投資家にとってグリーンボンドは分散投資の1つとして優れています。
この記事では、グリーンボンドとは何か、グリーンボンドの種類、企業・投資家にとってのメリット・デメリット、グリーンボンドの今後について解説します。

グリーンボンドとは?

グリーンボンドとは、自治体や企業が発行する債券の一種です。グリーンボンドの発行によって調達した資金の用途は、環境問題の解決に貢献する事業に限定されます。
環境省の「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2022年版」によれば、グリーンボンドは以下の3つを満たす債券です。

- 調達資金の使途は環境改善効果のある事業(グリーンプロジェクト)に限定されている
- 調達資金が確実に追跡管理されている
- それらについて発行後のレポーティングを通じ透明性が確保されている
参考:環境省「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン 2022年版」

近年、投資家間で社会的責任投資やESG投資の考え方が広まっています。投資家は、経済的なリターンだけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)といった倫理的な面も考慮した投資判断を行うようになってきています。企業もそれらに配慮した経営をすることで、資金調達に有利に働き、さらに企業イメージの向上にもつながります。グリーンボンドはESG投資をする投資家や機関から注目されており、グリーンボンドの発行額も年々増加しています。

参考:環境省「グリーンボンドに関する環境省の取組について」

グリーンボンドの種類

グリーンボンドには、法規による定義がありませんので、国際資本市場協会(ICMA)が発行している「グリーンボンド原則」が、グリーンボンド発行の一般的なガイドラインとなっています。グリーンボンド原則については次項で解説します。「グリーンボンド原則」は、グリーンボンドの種類を大きく4つに分類しています。

標準的なグリーンボンド(Standard Green Use of Proceeds Bond)
グリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券。特定の財源によらず、発行元全体のキャッシュフローを原資として償還を行う。

グリーンレベニュー債(Green Revenue Bond)
グリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券。公的なグリーンプロジェクトのキャッシュフローや、それに必要な公共施設の利用料などを原資として償還を行う。

グリーンプロジェクト債(Green Project Bond)
グリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券。再生可能エネルギー発電事業など、単一または複数のグリーンプロジェクトを原資として償還を行う。

グリーン証券化債(Secured Green Bond)
ソーラーパネルや省エネ性能の高い住宅、自動車など、グリーンプロジェクトに関わる資産を担保とし、それらの資産から生まれるキャッシュフローを原資として償還を行う。

グリーンボンドの4原則とは?

グリーンボンド原則は、ICMAが発行している、グリーンボンドの発行に関するガイドラインです。グリーンボンド原則は、以下の4つの中核要素で構成されます。

資金調達の使途
・グリーンボンドによる資金調達の対象について例示
・5つの環境目的(気候変動緩和策・気候変動対応策・自然環境保全・生物多様性保全・汚染対策)に適格性があると規定

プロジェクトの評価と選定のプロセス
・グリーンプロジェクトの選定基準やプロセス等について投資家に伝達すべき点について規定
・発行体への推奨事項について規定

資金調達の管理
・グリーンプロジェクトの資金調達は別勘定で管理することについて規定
・管理の透明性を確保することについて規定

レポーティング
・資金調達の使途に関する情報開示と報告について規定
・調達資金全てがグリーンプロジェクトに使われるまで、さらに大きな状況変化が生じた場合に、最新情報を公開するべきと規定
・年次報告には、調達資金を充当した事業リストと概要、充当額、期待される効果を含めるべきと規定
・効果の測定は、定性・定量的に行い、その定量的な測定の方法、前提条件を開示することを推奨
参考:環境省 グリーンファイナンスポータル「グリーンボンド原則(Green Bond Principles: GBP)」

グリーンボンドを発行する側と投資する側のメリット・デメリットとは?

グリーンボンドの発行者と投資家、両者にはそれぞれの利点と注意点があります。ここからは、グリーンボンドを発行する側と投資する側それぞれについて、メリット・デメリットを解説します。

メリット

グリーンボンドを発行することで、ESG投資をしている投資家からの支持を得られます。それにより、これまで投資していた投資家だけでなく、新しい投資家との関係構築のきっかけになり、幅広い投資家から資金調達できる可能性があります。
近年、長期的な成長可能性を判断するための、非財政面における重要な評価指標としてESGが注目されています。グリーンボンドを発行することで、ESG面で高く評価した投資家などから、比較的好条件での資金調達が期待できるうえ、環境問題に取り組む企業として、企業のイメージアップにもつながります。
これは投資する側にも当てはまり、環境問題への取り組みを支援することで、社会的な支持を獲得できます。また、グリーンボンドは価格変動のリスクが低く、分散投資の1つとして優れています。気候変動などの環境の変化は、企業の財務に大きな影響を与えますが、グリーンボンドにより、このリスクを軽減できるため、中長期的に安定した投資が可能になります。
ESGについては「ESGとSDGsの具体的な違いとは?それぞれの概要と関係性も解説」で詳しく解説しております。

デメリット

グリーンボンドにより調達された資金の使途は、明確に定められており、透明性も確保されていなければなりません。そのため、資金の使途が限定的になり、投資転換を行うことができません。さらに、外部評価を受けるための手数料や、使途報告のための時間的・人員的コストが必要になります。
投資家には「グリーンウォッシュ債券」のリスクがあります。グリーンウォッシュ債券とは、

- 実際には環境改善効果がない債券
- グリーンボンドとして発行しているが、適正に環境事業に使用されていない債券

のことです。ICMAのグリーンボンド原則や環境省のグリーンボンドガイドラインなど、グリーンボンド発行に関するガイドラインがありますが、これらは自主的なガイドラインであり、これそのものに法的拘束力や罰則はありません。そのため、検討している投資対象が、グリーンボンドかどうかを、投資家自身が注意して判断する必要があります。

グリーンボンドの市場規模と今後の可能性

環境省のグリーンファイナンスポータルによれば、日本のグリーンボンドの発行実績は年々増加しています。世界では特にヨーロッパを中心に、グリーンボンドが普及しており、2023年では、日本のグリーンボンド発行総額は2兆円以上、世界の発行総額はおよそ40兆円となっており、今後はさらに発行総額は増加していくことが見込まれます。
とはいえ、グリーンボンド発行に関するハードルは未だに高く、企業や投資家も足踏みしている部分があります。法令の整備や補助制度の追加、条件の改正などがあれば、さらにグリーンボンドの普及が期待できます。

グリーンボンドの国内発行事例

2014年に、日本政策投資銀行がグリーンビルディング向け投資の使途で、2.5億ユーロのグリーンボンドの発行を行いました。これが国内で初めての事例で、その後メガバンクや自治体が再生可能エネルギー事業・省エネルギー事業や太陽光発電事業などの使途で、グリーンボンドを発行しています。さらに近年では、一般企業の発行事例も増加しています。
東京都の事例
東京都は、2017年10月から継続的にグリーンボンドを発行しています。その使途は、オリンピック施設の環境対策やスマートエネルギーの都市づくり、公園整備などです。また、道路照明のLED化、河川・下水などの整備の使途でも発行しており、2023年10月時点で東京都は計18件の発行実績があります。

NTTファイナンスの事例
NTTファイナンスは、グリーンビルディングに関連する投資のリファイナンスや、環境活動を行うグループ会社の買付資金のために、2023年10月時点で13件の発行を行いました。

日本電産の事例
日本電産は、電気自動車用モータの製造に関連する設備費・研究開発費のために、4件(500億円 / 300億円 / 200億円 / 5億ユーロ)のグリーンボンドを発行しています。
グリーンボンドについて解説しました。グリーンボンドを発行することで、企業イメージの向上や、資金調達に有利に働くといったメリットがあります。グリーンボンドの発行に関するガイドラインには、法的拘束力や罰則が定められていませんので、投資家は投資対象をしっかり見極める必要があります。

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