脱炭素社会とは?日本の取り組みや目標を解説!企業は何をすべきか?
脱炭素社会は、地球環境を守るために重要な考え方です。世界各地の国や企業で、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが行われています。
この記事では、脱炭素社会の基礎知識や目標、日本の企業における具体的な事例について解説しました。脱炭素社会への理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
脱炭素社会とは?意味をわかりやすく解説
脱炭素社会とは、二酸化炭素の排出が実質ゼロとなる社会のことです。温室効果ガスである二酸化炭素は、地球温暖化の原因と考えられています。そのため、二酸化炭素の排出量を可能な限り減らし、脱炭素社会を実現することが、地球環境を守るために重要です。
脱炭素社会という言葉が掲げられる以前は、低炭素社会というあり方が目指されていました。低炭素社会は二酸化炭素の排出量が低い水準に抑えられた社会のことで、基本的な考え方や目的は脱炭素社会と同じです。
しかし、低炭素社会の実現に向けて設定された目標は、地球温暖化を止めるためには不十分でした。そこで、二酸化炭素の排出量を減らすだけではなく、実質的にゼロの状態を目指すために掲げられた考え方が脱炭素社会です。
脱炭素社会は全世界共通の達成すべき目標
温室効果ガスを減らし、地球温暖化を解決することは、世界中の国と地域が共通で取り組むべき課題です。そのため、脱炭素社会は全世界共通の目標といえます。
地球温暖化に対する目標設定として、1997年の京都議定書が有名です。しかし、京都議定書では二酸化炭素排出量の削減が先進国のみの義務とされ、効果が限定的でした。その後、2015年に採択されたパリ協定では、先進国と途上国を合わせた190か国以上の国々が参加し、脱炭素社会の国際的な実現が目指されています。
パリ協定で掲げられた目標は、産業革命以前を基準として地球の温度上昇を2℃より十分に低く保つことや、21世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることなどです。パリ協定に関するより詳しい情報は、「
パリ協定とは?脱炭素に関する日本の取り組みと現在地をわかりやすく解説」をご覧ください。
ただし、パリ協定はあくまでも地球温暖化対策の大枠だけを定めたものです。そのため、
脱炭素社会の実現に向けた具体的な目標設定や施策は、各国や各地域が個別に行う必要があります。欧米諸国では、化石燃料に対する炭素税や、排出量取引などの制度がすでに整備されるなど、地球温暖化防止の取り組みが活発です。
今後は国や地域の自治体が制度を作るだけでなく、企業や個人においても脱炭素社会に向けた行動が求められます。
日本の脱炭素社会に向けた目標と取り組み
脱炭素社会の実現に向けて、日本政府は2019年6月11日に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定しました。具体的な目標として、21世紀後半のできるだけ早い時期に脱炭素社会を実現すること、そして2050年までに温室効果ガスを80%削減することを掲げています。
ただし、その段階での削減進捗やエネルギー利用に関する試算によれば、この目標達成は難しい状況でした。そこで日本政府は、2021年10月22日に「地球温暖化対策計画」を閣議決定し、地球温暖化対策の方針として3つの柱を提示しました。
イノベーションの推進
脱炭素社会に向けた取り組みにおける1つ目の柱は、イノベーションの推進です。技術分野でのイノベーションによって、温室効果ガスを大幅に削減できる方法の実用化および普及を目指します。
イノベーションが期待されている具体的な技術は、水素・燃料電池や、セルロースナノファイバー、カーボンリサイクルなどです。水素・燃料電池で走る自動車が実用化できれば、自動車の排気ガスに含まれる温室効果ガスが削減できます。
セルロースナノファイバーは植物素材で作られる樹脂素材です。さまざまな製品の基盤にセルロースナノファイバーを使用することで、製造業における温室効果ガスの削減が期待できます。
カーボンリサイクルは、炭素資源を分離・回収して再利用する技術です。カーボンリサイクルが実現できれば、大気中に放出される二酸化炭素を削減できます。
グリーンファイナンスの推進
脱炭素社会に向けた取り組みにおける2つ目の柱は、グリーンファイナンスの推進です。グリーンファイナンスとは、環境問題に取り組む企業に対して十分な資金が循環するような仕組みを表します。
グリーンファイナンスの一例として、日本では2013年に環境省によって「一般社団法人グリーンファイナンス推進機構」が設立されました。この機構では、低炭素社会の実現に向けた取り組みを行う企業に対して出資するほか、グリーンボンドと呼ばれる債権の発行支援も実施しています。
ビジネス主導の国際展開・国際協力
脱炭素社会に向けた取り組みにおける3つ目の柱は、ビジネス主導の国際展開・国際協力です。国際協力を推進する具体的な仕組みの1つとして、二国間クレジット制度が挙げられます。
二国間クレジット制度は、先進国が途上国に対して資金や技術を提供し、温室効果ガスの削減分をクレジットとして受け取れる仕組みです。この制度により、途上国は資金や技術を活用しながら、先進国も自国における削減目標を効果的に達成できます。
2023年時点で日本が二国間クレジット制度を構築している国は、ケニアやベトナム、インドネシアなどを含む27か国です。
脱炭素社会に向けて企業が取り組むべきこととは?事例を紹介
脱炭素社会に向けて、政府だけでなく企業の取り組みも欠かせません。ここからは、経済活動と同時に環境対策事業にも取り組む日本の企業を3社紹介します。
オムロン株式会社(製造メーカー)の事例
オムロン株式会社は製造のエネルギー⽣産性の向上に取り組んでいます。工場の生産ラインを短くして、需要に応じて生産する手法を導入することで、エネルギー消費量あたりの売上高や付加価値「エネルギー効率」を引き上げることに成功しました。それにより、消費電力を30%削減し、エネルギー効率を1.85倍に向上させました。
イオンモール株式会社(小売業界)の事例
イオンモール株式会社では、EV電力買取サービス「V2AEONMALL」を行っています。
家庭内で発電した電力をイオンモール駐車場の放電スポットにて放電することで、ポイントなどをイオンモールアプリ内で受け取ることができます。
家庭で余った電気を無駄にせず、利用することでCO2排出量の削減につながっています。
鈴廣かまぼこ株式会社(食品業界)の事例
鈴廣かまぼこ株式会社では、新社屋にネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を採用したことで、エネルギー削減に成功しています。
新社屋のコンセプトは電力の地産地消で、太陽光パネルと、地中熱や地下水を利用した空調システムが導入されました。
この新社屋に設立により、同規模のビルと比較して54.6%の一次エネルギー削減が可能となっています。
この記事では、脱炭素社会の意味や背景、日本企業の取り組み事例について解説しました。脱炭素社会の実現に向けた活動は、企業が社会的責任を果たすために重要です。
今回ご紹介した内容を参考に、脱炭素化に向けて企業ができる活動について検討されてみてはいかがでしょうか。
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