COLUMN

ごみの自然界流出問題に挑み続けて15年、株式会社ピリカの現在地

コラム

2026.08.11


「三井物産共創基金」社会課題解決と社会的インパクトを目指して!

三井物産共創基金」は、社会課題解決へ向け助成金を必要とする社会課題解決のプロと、三井物産社員との「共創」によって進める社会貢献活動です。本基金では、ソーシャルスタートアップ・NPO・研究者など、社会課題解決に取り組む個人を「イシューファインダー(Issue Finder)」と呼び、そんな社会課題解決のプロと「志」を共にする三井物産の社員が「共創者」としてタッグを組み、助成金額も1案件辺り最大1億円、伴走型の支援でより大きく育て、社会課題解決と社会的インパクトを高めることを目指します。また、社会課題解決のプロとの共創は、資金提供にとどまらず、未来のサステナビリティ・ビジネスにつながる新たな気づきを得る場となることも期待しています。

今回は、本基金の助成案件の一つである「ごみの自然界流出問題の解決」に取り組む、イシューファインダーである株式会社ピリカ代表取締役社長の小嶌 不二夫氏に、これまでそしてこれからの取組みや志について聞いてみました。


はじめまして。ごみの自然界流出問題に取り組む、株式会社ピリカ代表の小嶌と申します。

道端の吸い殻、川辺のペットボトル、砂浜に散らばるプラスチックの破片。あまりに見慣れているせいで、つい「仕方のないもの」として通り過ぎてしまうごみが、身の回りにはたくさんあります。私たちは2011年の創業以来、15年にわたってこの「ごみの自然界流出問題」に、テクノロジーを用いて向き合い続けてきました。今日は、私たちが今どんな取り組みをしているか、少し詳しくお話しさせてください。

原点は、世界を旅して見た現実

富山で生まれ、神戸で育った私は、小学校2年生の時に学校の図書室で出会った本がきっかけで、環境問題の解決を志すようになりました。大阪府立大学の機械工学科を卒業後、京都大学大学院エネルギー科学研究科に進みましたが、半年で休学して世界を放浪する旅に出ます。そこで衝撃を受けたのが、訪れたほぼすべての国で深刻化していたごみのポイ捨てや不法投棄、プラスチック等の自然界への流出でした。帰国後、京都大学の研究室でごみ拾いSNS「ピリカ」の開発を始め、2011年に大学院を中退して会社を設立しました。社名の「ピリカ」は、アイヌ語で「美しい」という意味の言葉です。

おかげさまでピリカは2021年には第一回環境スタートアップ大臣賞を、2022年にはMIT Technology Review Innovators Under 35 Japanをいただき、国連環境計画(UNEP)からも、SDGs達成に向けた世界の優良事例の一つとして表彰していただくまでになりました。

拾う・調べる・資源にする ―― 3つのテクノロジー

私たちが手がけているのは、大きく3つの領域です。

一つ目は、ごみ拾い促進プラットフォーム「ピリカ」。清掃活動をスマートフォンで撮影・投稿するだけで清掃活動が地図上に可視化される仕組みで、130以上の国と地域で、のべ300万人以上の方に使っていただき、これまでに4億個以上のごみを回収してきました。全国の自治体でも導入が進み、不法投棄の通報管理など行政の現場でも活用いただいています。

二つ目は、AIを使ったごみ分布調査サービス「タカノメ」。スマートフォンで動画を撮影するだけで、AIが路上のごみを検知し、分布をヒートマップとして可視化します。三井物産の「三井物産共創基金」に採択いただき、同基金の枠組みを活用して同社の方々にご支援もいただいたことで、小売業や飲食業などの配送車両にも調査端末を設置いただけるようになり、広い範囲をくまなく調査できる体制が整いつつあります。海外でも8カ国で調査を実施し、累計走行距離は200万km(地球50周分!)に達しています。

三つ目は、回収した流出ごみを資源として活かす「アップサイクル」。複数の素材が混ざり合い、汚れも付着しているために、これまでリサイクルが難しいとされてきたポイ捨てごみや海岸漂着ごみから板材をつくる技術を確立し、各地でベンチやテーブルなどの製品として生まれ変わらせています。

人工芝という、思いがけない流出源――データに基づく情報発信と政策提言

テクノロジーや事業を通じて得られるデータも、問題の発見や解決の重要な武器です。2018年から2021年にかけて、私たちは日本財団らと共同で全国300地点以上の水域でマイクロプラスチックの流出実態調査を行い、国内の河川や港湾に流出しているマイクロプラスチックの約25%が、スポーツ施設などで使われる人工芝であることを突き止めました。NHKや日本経済新聞をはじめ数多くのメディアに取り上げていただき、社会的な議論を呼ぶことになりました。また、単に問題を発表して終わりではなく、人工芝と連携した解決策の開発(水路に取り付けられるフィルターの開発)や、流出防止設備の普及啓発、施設整備を支える公的助成金制度の改善提言など、現実的な解決策を一つひとつ実装することを大切にしています。

最新の挑戦:海岸清掃ロボット

2025年度からは、東京都「東京ベイeSGプロジェクト」の先行プロジェクトに採択いただき、海岸漂着ごみを自動で回収するロボットの開発にも挑戦しています。4足歩行ロボットとクローラ型の運搬ロボット、ロボットアームを連携させ、屋外の実環境でごみを検出・把持・運搬するシステムです。今年2月からは実際に海岸での実証実験を重ねており、今年度中にはロボットがごみを探し、見つけ、近づき、拾い、運搬用のロボットに受け渡すところまで自律的に行えるシステムを作ります。約2年をかけてシステムを磨き上げ、ロボットによる海岸漂着ごみ回収の事業化を目指しています。高齢化と人手不足で清掃活動の担い手が減るなか、テクノロジーの力でこの問題に新しい選択肢を提示すると共に、世界全体でごみの回収量を大きく引き上げられる仕組みを作っていきたいと思います。

おわりに

ごみの自然界流出問題は、特定の業種や組織だけで解決できるものではありません。三井物産共創基金を通じたご支援もいただきながら、これからもテクノロジーの力で、現実的な解決策を一つひとつ実装していきたいと思います。

株式会社ピリカ 代表取締役 小嶌 不二夫


会社概要

商号:株式会社ピリカ
設立:2011年
代表者:代表取締役 小嶌 不二夫
事業内容:ごみの流出対策に関するテクノロジーの開発・提供(ごみ拾い促進プラットフォーム「ピリカ」/ごみ分布調査サービス「タカノメ」/マイクロプラスチック調査装置「アルバトロス」/流出ごみのアップサイクル 等)
URL:https://corp.pirika.org

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  • #三井物産共創基金