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最終更新:2023.03.10

カーボン・オフセットとは?必要性から企業の取り組み事例までを紹介

カーボン・オフセットは、自身で削減しきれない分のCO2の排出量を、他の場所で実現したCO2排出削減分で埋め合わせをする枠組みです。

CO2排出量の削減を行う個人や団体は、できるだけ温室効果ガスの削減努力を行ったうえで、削減しきれない分のCO2は、植林や森林保護の活動や投資によって埋め合わせます。

この記事では、カーボン・オフセットとは何か、メリットや問題点、どのような形態があるか、実際の事例についてくわしくまとめます。

カーボン・オフセットとは?

カーボン・オフセットとは、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を削減するための枠組みの一つです。

個人や企業、政府などは、自らの日常生活や経済活動の中で排出される温室効果ガスを削減する努力を行います。しかし、日常生活や経済活動を行っている限り、どうしても削減しきれない部分がでてきます。
そこで、避けることができない温室効果ガスの排出については、植林や森林保護などによる温室効果ガスの削減・吸収活動、あるいは他者が実現した温室効果ガス削減量をクレジットとして購入するなどを通してオフセット(埋め合わせ)します。
このような考え方をカーボン・オフセットといいます。

カーボン・オフセットは1997年、イギリスのNPO団体の取り組みから始まり、アメリカ・ヨーロッパを中心に活発に行われています。

カーボン・オフセットの必要性と意義

地球温暖化の主な原因は、個人の生活や企業・国家の経済活動により排出されるCO2などの温室効果ガスといわれています。

経済活動が活発であるほどCO2の排出量が増え、地球温暖化が進むことになりますが、気温が上昇すると、海面上昇による国土の消失、異常気象、生態系の変化など、様々な問題が引き起こされると言われています。
パリ協定で合意された世界目標は「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」ことです。『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による第五次評価報告書(AR5)』では、気温上昇を2℃未満に抑えるためには、2050年までに温室効果ガスを40%から70%削減(2010年比)、気温上昇を1.5℃に抑えるためには、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしなければならないことが指摘されています。
企業や団体は温室効果ガスの削減活動を進めていますが、経済活動を行う以上、温室効果ガスの排出を完全になくすことは困難です。また、国や地域、企業や団体によって、温室効果ガスの排出量やその削減余力は様々です。
カーボン・オフセットは、自身で削減しきれない温室効果ガス排出量を、他の場所や他者によって削減された温室効果ガスで埋め合わせをすることで、地球全体として温室効果ガスの排出量を実質ゼロに向かわせていくところに意義があります。
また、温室効果ガスを削減した分は、クレジット化して他者に販売することができます。これによって販売者は収益を得ることができ、この経済的インセンティブが温室効果ガス排出量の削減を促進することが期待されます。

カーボン・オフセットの代表的な取り組み

カーボン・オフセットの取り組みには様々な形態があります。以下では、カーボン・オフセットの代表的な取り組みについて5つ紹介します。

取り組み①オフセット製品・サービス

製品やサービスの製造、輸送、販売、使用、廃棄といったライフサイクルを通じて排出される温室効果ガスをオフセットします。

例えば、LNGの生産・輸送・消費により排出されるCO2を、森林保護や植林などによって得たカーボン・クレジットでオフセットする「カーボンニュートラルLNG」の取引などが行われています。LNGは化石燃料ですので、それを使用すればCO2が排出されることになりますが、カーボンニュートラルLNGの購入者は、その使用によってCO2が排出されていないものとみなされます。

取り組み②会議・イベントのオフセット

イベントの主催者が、国際会議やコンサート、スポーツ大会などのイベントで排出される温室効果ガスをオフセットします。

取り組み③自己活動オフセット

個人や組織の事業活動で排出される温室効果ガスを直接オフセットします。

事業活動による温室効果ガスの排出量を直接削減する代わりに、もしくは事業活動の中でどうしても削減できない分のCO2排出量を、他の場所または他者が削減した分でオフセットする枠組みです。

取り組み④クレジット付き商品・サービス

クレジット付き商品・サービスにおけるカーボン・オフセットは、消費者の日常生活における温室効果ガスをオフセットする取り組みです。

商品・サービスの提供者やイベントの主催者は、提供する商品・サービスやチケットにクレジットを付して販売を行います。利用者はこれを購入することで、自身が日常生活の中で排出しているCO2をオフセットします。

取り組み⑤寄付型オフセット

寄付型オフセットは、製造者やサービスの提供者、イベントの主催者等が、クレジットの購入のために利用者から資金提供を募り、その資金でクレジットを購入する枠組みです。

カーボン・オフセットの企業事例をご紹介

カーボン・オフセットの取り組みは、国内で活発に実施されています。

例えば、佐川急便株式会社では、業界初の「カーボンニュートラル宅配便」を展開しており。で車両を使用せずに、台車や自転車などでの集配を行いCO2を削減すると同時に、削減が困難な部分は森林保全活動により創出されたクレジットによりオフセットしています。
また、株式会社ローソンは、「Ponta」ポイントをカーボン・クレジットと交換することで、個人が排出するCO2をオフセットし、地球温暖化防止に貢献することを促進しています。

丸井グループでは、シューズを中心に「カーボンフットプリント」を店頭表示し、お客様が環境にやさしい商品を選択できるような取組みを行っています。また、商品の生産地や被災地でカーボン・オフセットを実施することで、CO2排出を削減すると同時に、地域貢献を行っています。

これら企業以外にも、多くの会社が様々なカーボン・オフセットに取り組んでいます。

カーボン・オフセットのためのクレジット購入

カーボン・オフセットは様々な個人や団体が行っていますが、オフセットは一般に、CO2排出削減分をクレジット化し、クレジットを売買することで行われます。

カーボン・クレジットを販売している企業はまだ日本では多くはありませんが、三井物産の子会社であるe-dashでは、カーボン・クレジットのマーケットプレイスを運営しており、ここでカーボン・オフセットのためにクレジットを購入することができます。
詳細は「CO2排出量を自動で簡単に算出! e-dashが人気の理由」をご参照ください。
カーボン・クレジットの創出方法には、「再生可能エネルギー」「省エネルギー設備」「森林吸収」などがありますが、世界では「森林クレジット」がカーボン・オフセット手段の中心的な位置づけとなっています。
クレジットの種類や売買の仕組みについては、「J-クレジット制度とは?メリットや価格の相場をわかりやすく解説」で詳しく説明しています。
日本の企業でも、海外で森林クレジットに取り組む企業もあり、例えば1990年代から森林資源事業を推進してきた三井物産は、30年以上にわたり蓄積してきた知見を活かし、オーストラリアでの森林カーボン・クレジット事業に参画しています。
詳細は「森林ファンド事業」をご参照ください。
この記事では、カーボン・オフセットについて詳しくまとめました。

カーボン・オフセットは、温室効果ガスの削減努力をしたうえで、自身で削減しきれない分のCO2の排出量を、他の場所や他者が実現したCO2排出削減分で埋め合わせをする枠組みです。

多くの企業や団体が脱炭素化に向けた取り組みを始めており、その手段のひとつとしてカーボン・オフセットを実施しています。また、これに付随してカーボン・クレジットの取引が活発になってきています。

脱炭素化を進めている企業や団体は、カーボン・オフセットを検討してみてはいかがでしょうか。

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