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最終更新:2024.02.02

炭素税とはどんな税金の制度?導入国の動きやメリット・デメリットを解説!

炭素税とは、排出した二酸化炭素の量に応じて課税される税金です。この記事では、炭素税の目的や税収の使い道、炭素税のメリットとデメリットについて解説します。炭素税の本格的な導入が進んでいる海外と日本では課税内容や取り組みが異なっていますので、海外と日本それぞれの炭素税についても紹介します。

炭素税とは?目的や必要性を解説!

炭素税は環境税の一種であり、石油や石炭などの化石燃料から排出される二酸化炭素が課税対象です。炭素税の細かい仕組みは導入している国によって異なりますが、二酸化炭素の排出量に応じた税の負担を企業や個人に負担を求めるものです。
炭素税がつくられた背景には、地球温暖化が深く関係しています。
地球温暖化の原因は、温室効果ガスであると考えられています。代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の大気中濃度は年々増加していますが、その原因となっているのが石油や石炭など化石燃料の燃焼と考えられており、地球温暖化を食い止めるためには、二酸化炭素はじめ温室効果ガスの排出量を削減する必要があります。

炭素税は、地球温暖化対策として、その原因となっている化石燃料の需要を減らすことを目的にした税です。

炭素税の税収の使い道とは?

さまざまな国で導入されている炭素税ですが、日本でも「地球温暖化対策のための税」として2012年に導入されました。

炭素税の税収は地球温暖化対策の財源として用いられるほか、所得税など他の税を減税して、その補填に用いられる場合もあります。

いずれにしても、炭素税の最大の目的は税収を得ることではありません。
炭素税の最大の目的は、地球温暖化対策として、化石燃料の消費による二酸化炭素の排出量を削減する、つまり「化石燃料の需要を減らすこと」にあります。

炭素税の導入国の動き【日本と海外で何が違う?】

世界で初めて炭素税を導入したのはフィンランドです。フィンランドでは1990年に炭素税が導入され、税率や税収の使途を都度改めながら現在に至ります。 

フィンランドでの炭素税の導入を皮切りに、その後各国で炭素税の導入が進んでいきました。
化石燃料の利用削減を目的としている炭素税ですが、その課税内容や税収の使い道は国によって大きく異なります。炭素税の導入によって化石燃料の価格が上がると、企業や個人への負担が増加します。そのため炭素税の税収は、直接的な地球温暖化対策に限らず、所得税などの減税や国民への還付などさまざま使途で用いられ、工夫されています。
日本でも炭素税は導入されていますが、他国と比較してどのような違いがあるのでしょうか。

炭素税を導入している海外と日本、それぞれの課税内容などについて紹介します。

海外の炭素税に関する課税内容や変化とは?

炭素税は、地球温暖化への問題意識が高いヨーロッパの国々を中心に導入が進んでいて、国によってはCO2税ともよばれています。

早くに炭素税を導入した国でも、税率の上昇や課税対象の拡大など積極的な政策は今でも続いています。
実際に二酸化炭素の排出量は削減されているのか、経済成長は維持できるのか、気になるところですが、炭素税を導入した多くの国で二酸化炭素の排出量は削減されており、経済成長も損なわれていません。
海外の炭素税導入国の税率は、後述の日本の炭素税と比べると非常に高いことも特徴です。

たとえばたとえばフランスでは、2024年の時点で二酸化炭素の排出量1tにつき、44.55ユーロ(7,083円)の炭素税がかかっており、燃料価格に上乗せされています。
このような高い税負担はフランスだけではなく、他の多くの国にもあてはまります。日本の炭素税にあたる「地球温暖化対策のための税」が二酸化炭素排出量1tにつき289円の負担であることを考えると、44.55ユーロ(7,083円)の炭素税は極めて高い税率であるといえるでしょう。

炭素税の課税内容や税収の使い道について、いくつかの国をピックアップしてご紹介します。
国名 課税内容 税収使途
フィンランド ・暖房用および輸送用の
化石燃料消費に課税
・所得税減税
・企業の社会保障費削減に充当
スウェーデン ・暖房用および輸送用の
化石燃料消費に課税
・法人税減税
・低所得者層の所得税減税
ポルトガル ・化石燃料の消費に課税 ・所得税減税
フランス ・化石燃料の消費に課税 ・競争力強化
・雇用促進税額控除に充当
・交通インフラ資金

日本の炭素税に関する課税内容や変化とは?

先述の通り、日本の炭素税は諸外国に比べて税率が著しく低い特徴があります。

日本で炭素税が導入されたのは2012年で、そこから2014年、2016年と、段階的に引き上げられて2024年現在の税率(二酸化炭素排出量1tあたり289円)となりました。
具体的には、石油1kLあたり760円、石油ガス・天然ガス1kLあたり780円、石炭1tあたり670円の税負担で、二酸化炭素排出量1tあたり289円にそろうように設定されており、既存の石油石炭税に上乗せして課税される仕組みです。

また、ヨーロッパ諸国の多くが炭素税を一般会計としているのに対し、日本では特別会計になっています。
日本の炭素税による税収は年間2600億円程度。エネルギー対策特別会計に繰り入れられ、住宅ZEH化の支援や、太陽光発電・バイオマスなど再生可能エネルギー普及などに活用されています。

現在のところ、日本の炭素税「地球温暖化対策のための税」は、各国と比較して非常に小規模です。しかし、日本政府において「カーボンプライシング(炭素の価格付け)」の検討が本格化しているほか、環境省においても炭素税の本格導入に向けた検討が進んでいるとの情報もあります。
日本は2050年に脱炭素社会の実現を目指しています。そのためには化石燃料への依存を減らし、二酸化炭素排出量を削減することが急務です。

日本においても、炭素税の税率上昇や仕組みの整備など本格的に導入が進み、企業や個人の負担が増加してくことも考えられます。

炭素税を導入するメリット・デメリット

炭素税を導入するメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

最大のメリットとしてあげられるのは、二酸化炭素の排出量が削減されることです。実際に、炭素税を本格導入している多くの国において二酸化炭素排出量は減少しており、地球温暖化対策として有効な手段であると考えられます。
また、炭素税により企業や家庭における省エネへの意識が高まることもメリットといえるでしょう。炭素税の税収を活用し、各種地球温暖化対策への補助や支援、環境保全に対する新たな技術開発などにも期待できます。

ただ、二酸化炭素の削減量は目安であり、日本のような低い税率では達成できない可能性が高くなります。
さらに、炭素税は一律の税率であるため、燃料価格の高騰などが、低所得者に対して負担になりやすいこともデメリットです。ただこの問題に関しては、低所得者層への還元を行うことによって回避が可能であり、すでに政策が実施されている国もあります。

炭素税の今度の課題とは?

炭素税を導入している諸外国の動きをみれば、二酸化炭素の排出量を削減し地球温暖化を防ぐために、日本でも炭素税の税率を高めその仕組みを整備していく必要があります。

しかし、これにより経済成長が後退することは避けねばならず、化石燃料の供給を減らしながら、経済活動を維持することが求められています。

先述の通り、政府においても企業や個人に、二酸化炭素排出量に応じた税負担を求める「カーボンプライシング(炭素の価格付け)」の導入検討など、炭素税をめぐる動きが活発化していますが、排出量に応じて税率を変化させるなど、公平な仕組みをつくることも必要となります。
地球温暖化対策として、炭素税の導入は有効な手段の1つです。炭素税の本格的な導入が進んでいるヨーロッパのデータからは、二酸化炭素の排出削減と経済成長の両立が可能であることが示されています。

日本においても、2050年の脱炭素社会実現のために、炭素税の本格的な導入が進んでいくことが予想されます。

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