バイオエタノールとは?導入するメリットや普及の現状と問題点を解説 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

ソリューション低炭素燃料

最終更新:2024.11.14

バイオエタノールとは?導入するメリットや普及の現状と問題点を解説

再生可能なエネルギーとして期待されているバイオエタノール。日本においてもエネルギーの安定供給や持続可能性を高める目的で利用が促進され始めています。本記事では、バイオエタノールとは何か、必要とされる背景や導入のメリット・デメリットを解説。国内におけるバイオエタノールの普及の現状と問題点、次世代バイオエタノールの開発についても解説します。

バイオエタノールとは?

循環型のエネルギー源であるバイオエタノール
「バイオエタノール」とは、「バイオマス」を発酵させて製造するエタノールのことです。まずはバイオエタノールとは何か、エコである理由や製造方法などについて詳しく解説します。

バイオ燃料の一種

生物が太陽エネルギーを利用して光合成によって生成した有機性の資源(*)をバイオマスと言います。そのバイオマスを原料として生産される燃料がバイオ燃料で、バイオエタノールはバイオ燃料の一種です。
*石油などの化石燃料を除く

バイオ燃料には、以下の2つの利用方法があります。
1. 機械の燃料として利用
バイオエタノールなどのバイオ燃料は、用途に応じて、固体、ガス、液体など多様な形で利用されます。発電の他に、自動車、飛行機、船舶などの燃料として活用されています。

2. 直接燃焼させ発電に利用
バイオガスや木質ペレットなどのバイオ燃料は、火力発電に利用されます。これらのバイオ燃料を燃焼させることでエネルギーを発生させ、電力を供給します。

バイオエタノールが「エコ燃料」である理由

バイオエタノールがエコ燃料とされる理由は、再生可能なエネルギー源としての特性です。石油などの化石燃料は、数億年の歳月をかけて生成され、数十年で枯渇する可能性のある有限な資源です。これらの燃料を燃やすと、大量のCO2(二酸化炭素)が排出され、地球温暖化を加速させます。また、有害物質の排出により大気汚染や生態系への悪影響を与えます。

一方、バイオエタノールは化石燃料に比べ、ライフサイクル全体でのCO2排出量が少なく、有害物質の排出も抑えられるのが特徴です。また、バイオエタノールの原料である植物の栽培過程で吸収されたCO2は、燃やすと再び大気中に放出されますが、このサイクルにおいて大気中のCO2濃度は理論上変化しない、カーボンニュートラルであるとされています。植物を原料とするため、化石燃料と比べて地球温暖化への影響が少なく、持続的な循環型のエネルギー源として活用できます。

このように、バイオエタノールは脱炭素社会の実現に向けて貢献する「エコ燃料」として大いに期待されています。

バイオエタノールの原料と製造方法

バイオエタノールはさまざまな原料を使用して製造されます。

原料
・糖質(サトウキビ、テンサイなど)
・でんぷん質(米、トウモロコシ、サツマイモ、麦、タピオカなど)
・セルロース系(稲わら、建築廃材、間伐材など)

製造方法
バイオエタノールは、一般的に糖質やでんぷん質を糖化して発酵させた後に蒸留し、濃度99.5%以上の無水エタノールとして製造されます。セルロース系の原料からエタノールを製造することも可能ですが、商業化の初期段階にあります。

なお、バイオエタノールと石油などを原料とする合成エタノールは、物理学的性状において全く違いはありません。

バイオエタノールが必要とされる背景

地球温暖化のイメージ画像
エネルギー需要の逼迫や地球温暖化対策のためにもバイオエタノールの導入が進められています。ここでは、バイオエタノールが必要とされるに至った背景を解説します。

地球温暖化防止とエネルギーの逼迫

地球温暖化防止のため、近年ではアメリカやブラジルを中心に、バイオエタノールを自動車用燃料として活用する取り組みが進められてきました。

日本政府も、近年のエネルギー価格の高騰やエネルギー需給の逼迫を受け、運輸部門における石油依存からの脱却を目指しています。その一環として、バイオエタノールなどのバイオ燃料をエネルギー源の多角化の一つとして位置づけています。また、地球温暖化対策として「京都議定書目標達成計画」や「バイオマス・ニッポン総合戦略」に基づき、バイオエタノールの導入目標を設定しました。

さらに、日本は2015年の気候変動枠組条約会議で採択されたパリ協定に基づき、2030年度までに2013年度比でCO2などの温室効果ガスを26%削減する目標を掲げています。この目標の達成に向け、重要な役割を果たすと期待されているのがバイオエタノールです。

気候変動枠組条約では、バイオエタノールは「カーボンニュートラル」として位置づけられており、その燃焼時に排出されるCO2は排出量として計上されないため、地球温暖化防止に貢献するエネルギー源とされています。    

バイオエタノール導入のメリット・デメリット

CO2排出削減のイメージ画像
バイオエタノールは地球温暖化対策にもなるエコ燃料ですが、一方で製造過程で使われる原料やその生産においては、問題点も指摘されています。バイオエタノール導入のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット①脱炭素社会の実現に貢献できる

バイオエタノールの燃焼によって生じるCO2は、原料となる植物が成長過程で光合成によって吸収した大気中のCO2とほぼ同量です。先述のように大気中のCO2量を増加させず、化石燃料に比べて温室効果ガス(GHG)の排出量を大幅に削減できるため、脱炭素社会の実現に大きく貢献することが期待されています。

さらに、バイオエタノールの使用は大気汚染を低減し、化石燃料への依存から脱却するための手段となり得ます。バイオマスの活用は、循環型社会の形成において重要な役割を果たすでしょう。

メリット②再生可能なエネルギーである

バイオエタノールの原料となる植物は、太陽光と水、二酸化炭素を用いて光合成を行い成長します。石油のように枯渇する心配がなく継続的に生産が可能です。これにより、エネルギー自給率の向上や、特に運輸部門における石油依存度の低減が期待されます。

エネルギー供給源の多角化によって、エネルギーの安全保障が強化されるだけでなく、バイオエタノールの原料となる植物の生産を通じて農業の活性化も期待できるでしょう。

デメリット①食料価格の高騰を招く

バイオ燃料を大量に利用すると、食料価格の高騰を引き起こす可能性があります。バイオ燃料の原料であるサトウキビやトウモロコシなどは、人間や家畜の重要な食料です。これらがバイオ燃料の生産に多く使われるようになると、食料として利用できる量が減少し、食料価格が高騰する可能性が指摘されています。

デメリット②生産・供給において環境負荷・コストがかかる

サトウキビなどのバイオエタノールの原料を生産できる地域は限られています。農地を確保するためには、新たに森林を伐採する場合もあり、生態系に影響を与えることがあります。先進国がバイオ燃料を安易に輸入することで、輸出国での環境破壊が進行する可能性があります。バイオエタノールを大量生産する過程では、環境に負荷をかける可能性があることもデメリットです。原料の栽培、収穫、輸送、発行など、さまざまな工程でエネルギーが消費されます。

また、バイオエタノールを大規模に供給、使用していくには、設備投資が必要となります。貯蔵設備の整備などには新たにコストがかかることもデメリットといえます。

バイオエタノール普及の現状

次世代バイオエタノールの開発と活用
再生可能エネルギーとして期待されているエタノールですが、さまざまな問題が障害となり、普及が進まないのが現状です。そのため、次世代バイオエタノールの開発も進められています。バイオエタノール普及の現状について解説します。

バイオエタノールの普及の現状と問題点

日本では、エネルギー供給構造高度化法に基づき、石油精製事業者に対して原油換算で年間50万kLのバイオエタノールの導入目標が設定されています。しかし、次のような問題が普及を阻んでいます。

まず、バイオエタノールの価格はガソリンより割高傾向にあり、経済性に課題があります。また、製造・供給インフラの整備が必要で、食料との競合も課題です。次世代バイオエタノールの技術開発が急務となっています。エネルギー供給構造高度化法の基本方針では、食料と競合せず、生態系や環境への影響も少ない原料(セルロース、藻類、廃棄物等)を使用し、揮発油と比較して温室効果ガスの排出量を半減させる次世代バイオ燃料の技術開発を努めることが記載されています。

さらに、日本のバイオエタノールの自給率は極めて低く、アメリカとブラジルからの輸入に依存しています。

さまざまな課題が障害となり、バイオエタノールの普及が一足飛びには進まない現状です。そのため、直接的な解決策だけでなく、次世代バイオエタノールの開発など、別のアプロ―チも模索されています。

次世代バイオエタノールの開発

次世代バイオエタノールの開発として、いくつかの重要な取り組みが進められています。現在、サトウキビやトウモロコシなどの糖質やでんぷん質原料からは、比較的容易にバイオエタノールを生産できますが、これらの原料は食品と競合するため、その利用には限界があります。

そのため、食品と競合しないセルロース系原料、例えば木材や稲わらなどを使った次世代バイオエタノールの開発が進められてきました。しかし、セルロース系原料はその硬い繊維を分解するために前処理が必要とされ、コストが高くなるというデメリットがあります。より柔らかい藻類を原料とする第3次バイオエタノールの研究も行われていますが、同様にコストに課題があります。

また、遺伝子組み換え技術を活用し、バイオエタノールの生産をより効率的に行う取り組みも進行中です。この技術により、生産量の増加と安定供給が可能となり、効率的なバイオエタノールの生産が実現されることが期待されています。

三井物産の取り組み

三井物産は米国のLanzaTech社と提携し、微生物発酵技術を用いた排ガス由来のエタノール生成事業に取り組んでいます。
また、出資先である米LanzaJet社と共にエタノールからATJ製法で次世代航空燃料SAFの大規模生産にも取り組んでいます。

バイオエタノールの導入で脱炭素社会の実現を

持続可能な航空燃料を使ったジェット機のイメージ画像
再生可能なエネルギーとして活用が期待されるバイオエタノール。食料との競合がない原料を使った次世代バイオエタノールの開発も進行中です。今後、脱炭素社会の実現に向けて、バイオエタノールの技術開発や導入がますます重要となります。

三井物産は、米国のバイオ技術会社LanzaTech, Inc.(ランザテック社)の戦略的パートナーとして、同社の微生物由来エタノール技術を活用し、エタノール精製事業に取り組んでいます。

また、米国のLanzaJetとともに、高環境付加価値のバイオジェット燃料の事業化と量産に挑戦しています。同社は微生物発酵を用いて、製鉄所や製油所などの排ガスからエタノールを製造するという独自のガス発酵技術の開発に成功。可食原料を使用せずに製造でき、PM2.5削減にも貢献するエタノールとして注目されています。

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