J-クレジット制度とは?メリットや価格の相場をわかりやすく解説 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

ソリューションカーボンオフセット

最終更新:2024.09.24

J-クレジット制度とは?メリットや価格の相場をわかりやすく解説

この記事では、社内で環境問題対策に携わっている方や、これから携わっていく方、J-クレジット導入検討されている方々に向けて、地球環境保全に向けて大きな効果が期待されるJ-クレジット制度の概要や、その効果、価格などについて分かりやすく解説していきます。

J-クレジット制度とは?

J-クレジット制度とは、いわゆる「カーボン・クレジット」の制度であり、「CO2の排出量削減に貢献した分をクレジットとして認証する」制度です。

クレジットとして認証された「CO2排出量削減分」は、取引が可能となります。

カーボン・クレジット制度には、国連や政府が主導し運営する制度と、民間が主導し運営する、いわゆるボランタリークレジット制度があります。J-クレジットは前者に該当し、日本政府が主導し運営しています。
「カーボン・クレジット」に関する制度としては、過去には経済産業省が「国内クレジット制度」を、環境省が「オフセット・クレジット(J-VER)制度」を運用していましたが、2つの制度が統合され、J-クレジット制度となりました。現在は、経済産業省、環境省、農林水産省の3省が運営する、企業を対象とした制度となっています。

J-クレジット制度設立の背景には、環境保全や低炭素社会実現に対する国際的関心の高まりがあります。
パリ協定(2015.12.12 採択)によって定められた日本のCO2排出削減目標を達成するため、国内では地球温暖化対策計画(2016.5.13)が閣議決定されました。地球温暖化対策計画の中では「Jークレジット等を活用したカーボン・オフセットの取組みを推進する」とされており、J-クレジットはCO2排出削減目標を達成するための重要な取組みの一つとなっています。

オフセット(英:offset)とは「埋め合わせ」や「相殺」という意味で、カーボン・オフセットとはCO2排出量を、植林や森林保護などによるCO2吸収量で相殺しようとする考え方です。
カーボン・オフセットについて詳しくは「カーボン・オフセットとは?必要性や企業の取り組み事例をわかりやすく解説」をご参照ください。

J-クレジットの種類

J-クレジット制度では、クレジットを創出したい事業者が、CO2排出量を削減するためのプロジェクトを計画・登録し、プロジェクト実施の成果としてCO2排出削減量が報告・承認されることで、その削減量分が「クレジット」として認証・発行されます。

プロジェクト(クレジット)の種類は主に4種で、「再生可能エネルギー(発電)」「再生可能エネルギー(熱)」「省エネルギー設備」「森林吸収」があります。
再生可能エネルギー(発電)
太陽光・風力・水力などの再生可能エネルギー(再エネ)を導入することにより削減されたCO2排出量に対してクレジットが認証される。
再生可能エネルギー(熱)
バイオマス・地熱などの再生可能エネルギー(再エネ)を導入することにより削減されたCO2排出量に対してクレジットが認証される。
省エネルギー設備
ボイラーや照明設備の導入など、燃料転換や高効率化のため省エネ設備を導入することにより削減されたCO2排出量に対してクレジットが認証される。
森林吸収
森林経営活動や植林活動によって吸収されたCO2量に対してクレジットが認証される。

J-クレジット制度においては、再生可能エネルギーのクレジット取引が最も多く、省エネルギー分野がそれに次ぐ状況です。日本では、森林面積が広くはないため、森林吸収による森林クレジットはあまり多くありませんが、海外ではオーストラリアなどで、森林クレジット取引が活発に行われており、森林クレジットは、カーボン・オフセット手段の中心的な位置づけとなっています。
日本の企業でも、海外で森林クレジットに取り組む企業もあり、例えば1990年代から森林資源事業を推進してきた三井物産は、30年以上にわたり蓄積してきた知見を活かし、オーストラリアでの森林カーボン・クレジット事業に参画しています。
詳細は「森林ファンド事業」をご参照ください。

J-クレジットのメリットは?クレジット創出者と購入者それぞれについて紹介

続いてクレジット創出者と購入者それぞれがJ-クレジット制度を利用するメリットについて紹介します。

クレジット創出者のメリット

クレジット創出者とは、プロジェクトを実施してCO2排出量を削減し、それをクレジットとして登録する事業者の事で、メリットとして以下が挙げられます。
・クレジット売却益による投資費用の回収や更なる投資への活用
・省エネ設備の導入や再生可能エネルギー活用によるランニングコスト(エネルギーコスト)の低減
・温暖化対策に積極的な企業、団体としてのPR効果
・J-クレジット制度に関わる企業や自治体等との関係強化
最大のメリットはクレジットの販売による収益となりますが、売却した後も環境保全活動を行っている企業としてPRできたり、関連企業や自治体など他社と関わりを持つことができたりと、様々な恩恵を受けられます。

クレジット購入者のメリット

クレジット購入者とは、認証・登録されたクレジットを購入した企業や自治体などを指し、購入したクレジット(CO2排出削減)分は、自社が排出しているCO2とオフセットすることができます。また、クレジットを購入することで以下のようなメリットも得ることができます。
・地球温暖化対策法の「調整後温室効果ガス排出量」の報告や、CDP質問書及びRE100達成のための報告等でのクレジット購入のPR
・森林保全活動の後押しなど、環境貢献企業等としてPR効果
・製品・サービスにかかるCO2排出量をオフセットすることで、差別化やブランディングを向上
・関係企業や地方公共団体との新たなネットワークを活用したビジネス機会の獲得や、新たなビジネスモデルの創出
・クレジットを購入することで、気候変動に高い関心を持つ企業として外部に認知されるようになります。

J-クレジットの取引価格を紹介

クレジットの取引価格は仲介事業者を通じた相対取引や制度事務局による入札で決定されるため、一律ではありません。

経済産業省の制度説明資料によれば、クレジットの平均落札価格は下図のように推移しています。
出典:経済産業省 環境経済室 J-クレジット制度について 資料より
出典:経済産業省 環境経済室 J-クレジット制度について 資料より
これによると、特に再生可能エネルギーの分野でJ-クレジットの価値が上昇しています。今後も環境保全や気候変動への関心は増していくため、この傾向は続いていくと考えられます。
クレジットの創出量については、みずほリサーチ&テクノロジーズのカーボン・クレジット動向調査資料によれば、世界のカーボン・クレジット創出量は2018年215、2019年282、2020年336(単位はすべてMtCO2e:CO2換算メガトン)と急速に成長しています。国内J-クレジットに関しても、2018年4.7、2019年5.9、2020年7.0、2021年7.1MtCO2eと推移しています。こうした急激なクレジット創出量の伸張から、クレジット取引が現在注目されており、今後ますます活発に行われていくことが予想されます。
この記事では、地球温暖化対策の重要な取組みの一つであるJ-クレジット制度について解説しました。

カーボン・オフセットに関する制度は国内にも幾つかありますが、J-クレジット制度は国が運営するために価格が安定的であることが特徴です。

高まる環境保全への関心を受け、J-クレジットは益々注目を集めています。その価値は今後も高まっていくでしょう。

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