設備の入れ替え不要で、空調の省エネ・脱炭素化を実現するGeM2
既存設備の入れ替えをせずに、制御機器を後付けするだけで空調の省エネ化を進める「GeM2(ジェムツー)」。空調メーカーを選ばないマルチベンダー対応が可能であり、比較的短期での投資回収を実現しています。商業施設を主な対象とし、空調制御によって最大限の「省エネ効果」と「CO2排出量削減」を実現するその仕組みと魅力について、担当者に話を聞きました。
シネマコンプレックスやショッピングモールなどの大型商業施設で、私たちが快適に過ごせる理由のひとつに、空調による快適な温度や湿度の制御が挙げられます。三井情報の「GeM2(ジェムツー)」は、施設の空調を最適化することでその快適性を維持すると同時に、電力消費を抑えてCO2削減を実現する、クラウド型の空調最適化ソリューションです。エネルギー価格が高騰する昨今、特に注目を集めるGeM2について解説していきます。
IoTやクラウド技術に強みを持つ三井情報(MKI)
──まずは、GeM2が生まれた背景を教えてください。
福間 当社は、1967年に三井物産の情報システム部門から独立した三井情報開発を前身とするIT企業です。その後、特徴のあるIT企業を複数吸収合併し、ICT技術を蓄積しながら現在に至ります。2010年に地球温暖化対策基本法案が閣議決定され、社会的な環境意識の高まりを受け、私たちも省エネ化への取り組みを開始しました。その過程で生まれたソリューションの一つがGeM2です。
三井情報株式会社 DX第二営業本部 産業DX営業部 部長 福間透。1997年より数社IT企業を経験し、前職はNTTデータジェトロニクス(現NTTデータルウィーブ)にてITインフラ事業を担当。2013年に三井情報株式会社へ入社し、コンタクトセンター事業を担当。2017年より、商社営業本部にて三井物産本社移転プロジェクト所管。2021年4月よりDX営業本部 産業ソリューション営業部 部長に着任し、製造系アカウント及びDX / IoTソリューション事業を所管する。脱炭素・省エネに関するDX推進にも取り組む。
井村 GeM2とは「グリーン・エネルギー・マネージメント by MKI」を略したものです。これまで当社が培ってきたネットワークやプラント制御に関わる技術と知見を、空調制御に適用したものがGeM2になります。現在導入してくださっている顧客の8〜9割がシネマコンプレックスやショッピングモールといった商業施設で、「期待した費用対効果をあげることができている」と評価をいただいています。
三井情報株式会社 DX第二営業本部 産業DX営業部 営業室 マネージャー 井村亮介。2007年入社。入社後、コンタクトセンター事業におけるシステム提案業務を経験。2011年からGeM2の新規顧客開拓に従事、主に国内大手各GMS向けに100施設超への導入を担当。2018年より、産業業界向けDX / IoTソリューション事業を推進、その中の一つとしてGeM2による脱炭素推進に注力。
商業施設における快適な温度・湿度を自動制御
──商業施設が抱えている空調運用の課題とは主にどのようなものでしょうか。
宮園 多くのお客様がお見えになる商業施設では、その快適性を維持する必要があります。一方で、空調のオン・オフや温度設定を手動で行うことは従業員の負担になりますし、かといって空調をつけっぱなしにすれば、昨今のエネルギーコストや電気代の高騰といった背景もあり、コストが相応にかかります。このトレードオフを解消するのが、GeM2による空調の自動制御となります。
三井情報株式会社 DX第二営業本部 産業DX営業部 営業室 宮園隼風。2016年より機械系専門商社で発電事業者、コンビナートの法人を相対に発電設備や化学プラント向機械の卸売営業を担当。2022年に三井情報株式会社へ入社、産業系DX / IoTソリューション提案を推進。大手シネマコンプレックスへのGeM2事業提案 / 導入推進を担当し、脱炭素・省エネに向けた顧客のDX推進に取り組む。
──電力消費の抑制につながるメカニズムを教えてください。
井村 まず、空間に設置した温湿度センサーやCO2センサーを通して空間の環境データを取得すると同時に、空調の運転状況や設定温度のデータを取得します。これらのデータを季節や曜日・時間帯ごとに分析し、その傾向に基づいて最適な環境状況となるように空調を自動制御します。空調のつけっぱなしや、過度な温度設定のまま長時間運転するといったことがなくなりますので、電力の使用量を抑え、CO2の削減につながるほか、空調を操作する人が不要になることで、人件費の抑制にもつながります。
宮園 簡単な例で、シネマコンプレックスでは、映画が上映されていない時間帯は人もいないので空調をオフにします。また、商業施設では、人が多い時間帯と少ない時間帯で空調制御を行ったり、定常的に熱を発生するエリアは空調を常時オンにするなど、エリアごとに空調制御をおこなうといったこともあります。
メーカーを問わず、既存の空調設備の省エネ化が可能
──商業施設の空調制御において、GeM2の特徴はどこにあるのでしょうか。
田中 GeM2では制御機器を後付けで設置しますので、空調設備を更新することなく、既存の空調に対して省エネ化を進めることが可能です。その際には、特定メーカーに依存せずにベンダーフリーでどの空調機器にも対応することができます。また、センサーはすべて無線化しており配線工事が不要となりますので、導入コストを安く抑えられると同時に、短期間で導入することが可能です。
三井情報株式会社 DX第二営業本部 産業DX営業部 営業室 田中陽菜。2021年入社。入社以来GeM2事業を担当し、大手シネマコンプレックスへのGeM2事業提案/導入を推進。現在は製造業・電力業向けに情報インフラ基盤や分析ソリューション等を提供するなど、幅広くDX領域を担当。
──空調機器のメーカーを問わず、既存の設備を制御する技術は、どのようにして生まれたのでしょうか。
福間 当社が長年培ってきたネットワーク技術によって、空調設備ごとに異なる多様なプロトコルへの対応を可能としております。我々は空調機器メーカーではないこともあり、特定の機器制御を最適化するのではなく、マルチベンダー対応が可能なプラットフォームとして、空調機器制御を実現しました。
井村 当社には多種多様なIT企業を吸収合併してきた歴史があり、さまざまな技術を持つエンジニアが働いています。たとえば、GeM2における空調制御には、これまで培ってきたプラント制御技術が活かされています。また、当社は太陽光発電施設の遠隔監視ソリューションも提供していますが、ここにも同じ技術が活用されています。
エネルギーコスト削減/CO2排出削減の優れた実績
──これまでにGeM2を導入することで、どのくらいの効果が出たのでしょうか。
田中 平均するとシネマコンプレックスで40%、量販店やショッピングモールで20〜25%のエネルギーコスト削減を実現しています。人の出入りや繁閑が激しい施設ほど、削減効果は大きくなる傾向です。
宮園 CO2排出量の削減では、ある商業施設の実績として年間417トンを削減しています。スギの木は1本で14kg程度のCO2を吸収するとされるので、スギの木3万本に相当する削減量となります。
──GeM2導入にかかる費用と、その投資回収期間について教えてください。
宮園 導入コストは施設の規模によりますが、概ね500~2,000万円規模で、投資回収は通常5年かかるところを、GeM2の場合は2〜3年で回収することを目標としてお客様に提案しています。先ほどお伝えしたように、無線化を進めることで工事費用を抑えたり、これまでの実績を踏まえた精度の高い電気代の削減シミュレーションをおこなったりすることで、短期での投資回収を実現しています。
データ活用による業務効率化とCO2削減の両立を目指す
宮園 昨年、物流業界にもGeM2を導入しました。倉庫業務では従業員の労働環境を重視しており、従業員の快適性維持・向上を目的としたものです。今後もこのような形で商業施設以外にもGeM2を普及拡大させ、省エネ化を通した脱炭素化に貢献していきたいと思います。
福間 「データを活用して社会に貢献する」というのが当社の事業コンセプトであり、空調にとどまらずに広い分野において、データの蓄積、分析・活用、フィードバックを一気通貫で進めていきたいと考えています。製造業であれば、データ活用を通したプラント制御、異常検知、予防保全といったサービス、物流業であればサプライチェーンの効率化や在庫の適正化などが考えられます。またこれらを通して脱炭素化にも貢献できると考えています。
先日、貨物の輸送状況を可視化して到着時間を予測するクラウドサービス「FourKites」の提供を開始しましたが、現在はあらゆる分野でデータ活用が求められていると感じます。GeM2をはじめとして、さまざまなデータを蓄積し、横断的にそれらを活用し、顧客の「業務効率化」と「CO2削減」の両方を追求していきたいと思います。
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