太陽熱発電とは?メリットや仕組みを解説!太陽光発電との違いも
太陽熱発電は、太陽光発電と同様に太陽光のエネルギーを利用します。
光電効果を利用する太陽光発電とは異なり、太陽熱発電は太陽光のエネルギーを熱として取り出して、タービンを回転させることで発電します。
この記事では、太陽熱発電の基本から、太陽光発電との違い、さらに太陽熱発電の種類について詳しくまとめます。
太陽熱発電とは?どんな仕組み?
太陽熱発電は、太陽光をレンズや鏡などで集めて熱に変換し、熱を使って生成した蒸気でタービンを回転させることで発電するシステムです。
太陽熱は利用しても減少しないため、太陽光や風力、地熱、バイオマスと同様に再生可能エネルギーの1つであり、地球温暖化対策として注目されています。
太陽熱発電では、蓄熱により夜間でも発電できますが、日照時間が短い高緯度の地域には太陽熱発電に向いていないという注意点があります。
日本では、赤道付近の国々と比べて日照時間が短いことから、太陽熱発電の普及が遅れていましたが、火力発電などタービンを利用する既存の発電方法と併用できることや、技術の進歩で発電効率が良くなったことから、再び注目され始めています。
世界的には、日照時間の多い地域ほど太陽熱を活用しやすく、オーストラリアや南アフリカ、中東など砂漠地帯での運用が進んでいます。
これらの地域での発展により、2050年までに世界の太陽熱発電量が太陽光発電の発電量と同等になると推測されています。
太陽光発電や太陽熱発電だけでなく、水力や風力、バイオマスなど、さまざまな企業が再生可能エネルギーの導入に取り組んでいます。
「再生可能エネルギーを導入する企業が増加中!導入企業と再エネ発電企業を紹介!」の記事で再エネの導入企業を紹介していますので、を併せてご覧ください。
太陽光発電との違い
太陽熱発電と太陽光発電は、太陽から発せられたエネルギーを利用するという共通点のほかは、ほとんど別物だといえます。
太陽熱発電と太陽光発電それぞれについて、発電の仕組みをみてみましょう。
先述の通り、太陽熱発電は太陽光を熱源として利用します。
太陽熱発電は、太陽光を鏡やレンズを用いて一か所に集め、熱に変換してタービンを回転させることで発電します。熱を利用して水を沸かし、その力を利用して発電するという点では火力発電や原子力発電と同じ方法を使用しています。一方、太陽光発電は金属に光を当てると電子が飛び出す「光電効果」を利用して電気を集めています。つまり、熱に変換したり、蒸気でタービンを回したりしているわけではありません。
光電効果には一定以上の光量が必要であるため、太陽光発電は常に光が当たっていなければ発電できません。一方の太陽熱発電は、蓄熱しておけば夜間の発電も可能です。
また、太陽熱発電がタービンを回転させるのに対して、太陽光発電はパワーコンディショナーや蓄電池など専用の設備が必要なため、太陽光発電システムの方が一般的に高価です。
さらに、太陽熱発電は、火力発電など他の発電方法と組み合わせてタービンを回転させるハイブリッド化が可能という特徴もあります。
|
太陽熱発電 |
太陽光発電 |
仕組み |
太陽光を熱として利用 タービンを回転させる 火力発電などとハイブリット化可能 |
光電効果を利用 |
発電開始まで |
太陽光照射から蓄熱までの一定時間必要 蓄熱により夜間発電可能 |
一定以上の光量で即発電可能 |
発電効率 |
8%~35% |
20%程度 |
設置コスト |
比較的安価 |
比較的高価 |
太陽熱発電のメリット・デメリット
太陽熱発電のメリットは以下の通りです。
・特別な燃料や道具を必要としないため、太陽光発電よりも低コスト
・蓄熱などにより夜間でも発電可能
・他のタービンを回転させる発電方式とハイブリット化できる
一方、デメリットとして以下の点が挙げられます。
・太陽熱発電を設置するには、反射鏡を大量に設置する必要があるため、砂漠などの広大な土地が必要
・一般に日照量の長い地域ほど太陽熱発電に向いており、地域により向き不向きがある
・雨天では発電ができず、日の出から発電開始までの時間がかかる
日本・外国における太陽熱発電の導入
再生可能エネルギーは自然の力を利用するため、設備を設置する地理的条件により能率が変わります。
日本では、地理的条件から、現在の技術では太陽熱発電には適していないと考えられており、導入が進んでいるとはいえません。
太陽熱発電の場合、日照量が多い地域の方が効率よく発電できるため、低緯度地域が適しているといえます。
特に、北緯37度以南で日照量の多い「サンベルト地帯」では、積極的に太陽熱発電を行っています。
例えば、カリフォルニア州モハーヴェ砂漠のイバンパ(Ivanpah)太陽熱発電所は、Googleなどの出資もあり、世界最大の太陽熱発電所として注目されました。
2013年末に営業運転を開始したイバンパ太陽光発電所は、392MWの発電能力を擁し、年間発電量は米国の一般家庭14万世帯分を供給するといわれています。
しかし一方で、運転開始当初の発電目標を達成できなかったなど発電効率での課題や、2016年には電気系統が原因の火災などトラブルも発生しています。
近年では、これまで集光型太陽熱発電では最高で565℃までしか扱えなかったところを、クリーンエネルギーのスタートアップ企業「Heliogen」が1000℃を超える高温を用いる技術を開発しました。
この技術では、大量に設置された鏡をコンピュータ制御することで、より効率的な太陽熱発電を可能にしています。
「Heliogen」では、発生させた高温で二酸化炭素や水から水素を生成し、化石燃料を用いた火力発電よりも効率的に発電することを目指しています。このプロジェクトはビル・ゲイツ氏にも支援されています。
太陽熱発電の種類は4種類
太陽熱発電システムは、鏡やレンズなどを用いた集光・集熱部分と、タービンを回す発電部分があり、集光・集熱部分のつくりの違いによって以下の4種類に分類されます。
パラボラ・トラフ型
パラボラ・トラフ型は、細長いパイプ内に熱媒となる液体(オイルなど)を流しておき、曲面ミラーを使ってパイプに集光する方式です。
高度な集光技術が必要なく、システムの価格が安価で、土地さえあれば大規模な施設の建設が容易であるという特徴があります。
リニア・フレネル型
リニア・フレネル型はパラボラ・トラフ型と同様、鏡を利用して集熱管に集光するタイプの施設です。
トラフ型と異なるのは、曲面鏡を使うのではなく、僅かに凹面の鏡を複数枚用いるという点です。少しずつ角度を変えて複数の凹面鏡を並べ、数メートル上方のパイプに集光します。
リニア・フレネル型はトラフ型と比較して簡易なシステムで、5割から6割のコストで導入できるうえ、風圧の影響を受けにくいという利点があります。
一方、他のシステムに比べて効率が低いというデメリットもあります。
タワー型
タワー型は、タワーの上部に取り付けられた集熱器と、地上でタワーを取り囲むように設置された大量の平面鏡で構成されます。
平面鏡群はヘイオスタットと呼ばれる、自動でタワーの集熱器に向かって光を集中させます。
最高で1000℃に加熱することもでき、非常に効率のよいシステムですが、高度な制御装置、高いタワーが必要など、コストも高くなります。
イスラエルのネゲブ砂漠にあるAshalim太陽熱発電施設は、タワー型としては世界一の高さである240mのタワーを持つ太陽熱発電所を中心とした施設です。
ディッシュ型
ディッシュ型の太陽熱発電システムは、衛星放送のアンテナのような放物曲面状の鏡を用いて集光し、中心部分に電力変換ユニットを置いて発電します。
電力変換ユニットとしては、マイクロタービンやスターリングエンジンなどが採用されます。
直径5m~15m、発電出力は5kW~50kWと、他のシステムと比較して小規模かつ、発電効率が良く、さらに冷却水が不要という特徴があります。
ディッシュ型の実証事例は少なく、大規模なプラントでの事例はほとんどありません。技術改良が期待されます。
現在、世界的に二酸化炭素排出量を減少させる取り組みが加速しており、太陽熱発電を含めた再生可能エネルギーの需要が高まっています。
今後は、太陽熱発電の技術開発が進み、発電効率はもとよりシステム価格も改良されていくことが予想されます。 地理的な条件から日本では少ない太陽熱発電ですが、技術の進歩に期待が集まります。
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