水力発電の仕組みや種類、メリットとデメリットをわかりやすく解説 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

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最終更新:2024.09.24

水力発電の仕組みや種類、メリットとデメリットをわかりやすく解説

水力発電は河川にダムを設置するなどして水の位置エネルギーを貯え、それを用いて水車を回転させることで発電する方式です。この記事では、水力発電の仕組みやメリット・デメリット、さらには水力発電の分類などについて解説します。

水力発電の仕組みを図でわかりやすく解説

水力発電は、流水や落水といった水力を利用して水車を回転させ、水車の動力を電力に変換することで発電する発電方式です。
どのような方法で水の落差をつけるか、水車の構造、水の利用方法(河川やダムを利用)によっていくつかの種類に分けられますが、高いところにある水の位置エネルギーを電気エネルギーに変換する部分は変わりません。

発電機はタービンを回転させる火力発電や風力発電と同様、電磁誘導を利用して回転力から電気エネルギーを得る機械です。
電磁誘導とは、コイルなどの導体を貫く磁束が変化したときに、その導体に電位差(電圧)が生じる物理現象で、電位差によって流れる電流を誘導電流といいます。

導線につないだコイルの周りで磁石を回転させると、コイルを貫く磁束が変化するため、誘導電流が発生します。
発電機はこの仕組みを利用して、回転力を電力に変換しています。

水力発電のメリット・デメリットを紹介

メリットとして水力発電は、高いエネルギー変換効率や管理コストの安価さなどの特徴を持っており、注目されている再生可能エネルギーのひとつです。

自然の力で定常的、反復的に補充される資源によって得られるエネルギーを再生可能エネルギーといいます。
再生可能エネルギーですから、設備の設置や運用に多少の二酸化炭素の排出はありますが、発電時に二酸化炭素の排出はありません。
再生可能エネルギーの中で最も高いエネルギー変換効率を持つのが水力発電で、風力発電や太陽光発電のエネルギー効率が10%から40%であるのに対して、水力発電は約80%程度あります。

また、日本は山が多い地形で、水資源も豊富であることから、水力発電は日本に適した発電方法であると言えます。
一方、デメリットとしては、古くから活用されてきたことから、ダムや水力発電所が有利な土地は既に開発されており、新たに大規模な土地を見つけるのが難しく、新設されるのは比較的小規模な施設になる傾向があります。

水力発電は、発電や管理にかかるコストは他の再生可能エネルギーと比較しても安価ですが、ダムの新造には費用がかかります。また、水力発電の発電量は降水量に左右されることがあり、極端に雨量が少ない場合には、発電できなくなることもあるというデメリットもあります。

水力発電の種類と、それぞれの仕組みを解説

水力発電は、どのように水の落差を作るか、水の利用方法、水車の種類などにより分類することができます。

以下では水力発電の「構造物による分類」「水の利用方法による分類」「水車の種類による分類」についてそれぞれまとめます。

構造物による分類

水力発電は、構造物により「ダム式」「水路式」「ダム水路式」の3つに分類できます。
ダム式では、河川などにダムを建設して貯水し、貯水することで生まれた落差により水の位置エネルギーを蓄える方式で、ダムの水量によって水面の高さが変わるため、水量により発電量が変動します。

ダムの付近には発電所を設け、水車を回転させることで発電します。
水路式は、河川の下流に発電所を設置し、上流には取水堰(しゅすいぜき)を設けて流れを分岐させます。

本来の河川の流れよりも緩やかな勾配の水路を引き、発電所において急勾配で流水・落水させて水車を回転させ発電したのちに、水は元の河川に戻します。
ダム水路式は、ダムと水路を用いて水車を回転させ発電します。

この方式は貯水と発電の場所を別にできるため、立地条件を調整しやすい特徴があります。

水の利用方法での分類

水の利用方法によって「流れ込み式(自流式)」「調整池式」「貯水池式」「揚水式」に分類できます。
流れ込み式(自流式)は、河川の流れをそのまま引き込んで利用する方法です。

流れ込み式は出力調整が難しいですが、河川の流れがある限りは定常的に発電できるため、ベース部分の需要を担うことが多いです。
調整池式貯水池式は、電力需要が少ないときにダムを用いて貯水しておき、電力需要が多くなると溜めた水を多く流すことで、電力の需要変動に対応するための方式です。
調整池式は日間・週間単位の負荷調整に用いる比較的小規模なもので、貯水池式は季節間で調整を行うためのダムを設置する大規模なものになります。

揚水式も電力需要の変動に対応するための方式です。
揚水式では発電所の下流と上流それぞれにダムを設置し、両ダム間の水のやり取りで電力需要の調整をします。

電力需要の低い低負荷時には、余剰電力等を用いて上流の調整池に水をくみ上げておき、電力需要が高くなるとその水を利用して発電量を増やします。

揚水式は、水力を用いた一種の蓄電池であるともいえます。

水車の種類

水力発電のエネルギー変換効率を向上させるために、様々な水車が開発されています。

水力発電の水車は、機構内を水で満たし水圧を保ったまま回転に利用する反動水車と、流水を加速して当てることで回転させる衝動水車の2種類に大別できます。
一例として、反動水車は「フランシス水車」「プロペラ水車」、衝動水車は「ペルトン水車」「クロスフロー水車」などが挙げられます。
フランシス水車は、数十mから数百mの広い範囲の落差に対応でき、日本の水力発電所の7割で使われており、構造が簡単なため保守しやすいという特徴があります。

プロペラ水車は、水が縦方向に流入し縦方向に流出する反動水車で、そのうち水圧の変化に対応して羽を動かすことができるものをカプラン水車といいます。
カプラン水車は5mから80m程度の落差に適しており、フランシス水車に比べて発電効率が良いことが特徴です。

ペルトン水車はノズルから噴出したジェット水流を水車に当てて回転させます。

出力の調整が容易で、200m以上の高落差に適しています。
クロスフロー水車は小規模水力発電所で主に利用されます。

流水をガイドベーンにより2つに分け、それぞれを水車に当てて回転に利用します。

水力発電の現状と今後の展望について

水力発電はこれまで、日本の経済成長において重要な支えになってきました。
そのため、大規模な水力発電所の建設に有利な土地の多くは既に開発されていることが多く、建設コストもかかるため、大規模発電所の新設が難しい状況にあります。

大規模水力発電所にかわって、比較的小規模なマイクロ水力発電(小規模水力発電)の設置が進みつつあります。
小規模な水力発電所であれば、ある程度の水量があれば設置場所の融通が利きやすく、ポテンシャルも高いため、今後さらに重要な役割を担う可能性があります。

この記事では水力発電の仕組みや利点・欠点、分類さらに今後の展望についてまとめました。
水力発電は流水や落水による水の高度変化を水車の回転に利用して発電する方法で、非常に高い発電効率が特徴です。

水の利用方法や高度差の付け方、水車の種類などによっていくつかの分類があり、日本においては古くから利用されてきました。

この記事の内容が参考になれば幸いです。

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