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最終更新:2024.02.02

FIP制度とは? 固定価格買取制度(FIT)との違いや 導入のメリット・デメリットをわかりやすく解説

広く普及した再生可能エネルギー電源を電力市場へ統合するため、2022年より「FIP制度」が導入されました。その背景や仕組み、メリット・デメリットを解説していきます。

FIP制度とは?

固定買取制度(FIT)の普及と FIP制度導入の背景

再生可能エネルギーを次世代の主力電源とするべく、2012年に「固定買取制度(FIT)」が導入されました。対象となる再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)であれば、電力需給に関係なく、いつどんなときに発電しても電力会社が「固定価格」で買い取ってくれるというものです。この施策により、太陽光発電を中心として当初の想定を超える爆発的な普及がなされ、再生可能エネルギーの割合は2021年度に20.2%まで高まりました。
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計 2021年度」より作成
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計 2021年度」より作成
なお、経済産業省では、2030年度までにその割合を36~38%まで高める方針を示しており、今後もさらなる普及が求められています。
※再生可能エネルギー(自然エネルギー)についてさらに詳しく知りたい方は「再生可能エネルギーとは?その導入状況やメリット・デメリットを解説!」をご覧ください。
固定買取制度(FIT)により再生可能エネルギーが普及したことで、将来的には補助なしで自立し、長期間安定的に事業運営がなされていく道筋が必要となりました。そこで、電力市場への統合を図り、競争力のある電源へと成長させるため、2022年4月より「FIP(フィードインプレミアム:Feed-in Premium)制度」が導入されたのです。今後、発電規模の大きいものから段階的に「FIT制度」は廃止され、「FIP制度」に移行していくことも示されています。

FIP制度の概要と狙い

「FIP制度」では発電事業者が卸売市場や小売電気事業者へ電気を売る必要があります。一方で、再エネ発電の事業性を確保し易くするため、一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度となっています。
「FIT制度」では発電さえすれば固定価格で買い取ってもらえましたが、「FIP制度」では発電事業者が市場に参加することになるため、需給バランスを考慮する必要に迫られます。しかし、それらの調和によって最終的には電力システム運営全体でのコスト低減が予想されています。
なお、発電事業者は太陽光の発電量が少ない朝晩など、市場価格の高いときに電気を売ることができれば収入がアップします。その他、発電事業者や需要家(電気使用者)の間に立ち需給をコントロールするアグリゲーターが求められたり、気象を予想しながら蓄電池を有効活用するなど、新しい関連ビジネスの創出も期待されています。

FIP制度におけるプレミアム(補助額)の計算方法

認定を受けた発電事業者は、市場で売った価格とプレミアムの合計金額を収入として受け取れます。ただし、出力制御が発生する時間帯の供給にはプレミアムは交付されません。

プレミアム(補助額) = 基準価格(FIP価格) - 参照価格(卸電力市場における期待収入)

●プレミアム
基準価格から参照価格を引いて算定されます。

●基準価格(FIP価格)
発電に必要な各種費用の見込み額をベースに、調達価格算定委員会(資源エネルギー庁)によって設定されます。簡単に言えば電気の価格(製造原価+利潤)です。導入後しばらくは「FIT価格」と同水準とされ、参加年度から20年間(地熱のみ15年間)一律となります。

●参照価格(卸電力市場における期待収入)
参照価格 = 前年度の平均市場価格 + 非化石価値取引市場の価格に連動して算定された価格 -バランシングコスト
これは機械的に算出され毎月変動します。

参照価格の算定に出てくる「非化石価値取引市場」とは、再生可能エネルギーなど非化石燃料から発電された「環境価値」部分を電気と独立させ、「非化石証書」として取引している市場のことです。非化石証書を購入した企業は、CO2排出量を間接的に削減したとみなすことができます。
「FIT制度」では固定買取価格に含まれていましたが、「FIP制度」では発電事業者が非化石価値も自由に売ることができます。参照価格の算出において非化石価値取引市場の価格が考慮されているのは、発電事業者による環境価値の二重取りを防ぐためです。
「バランシングコスト」については後述します。

FIP制度で 発電事業者に求められること

バランシング
電気は「同時同量」と言われるように、電気を作る量(供給)と電気の消費量(需要)が、同じ時に同じ量になっている必要があります。その需給バランスが崩れると電圧や周波数が乱れ電力供給が支障をきたし、ときに大規模な停電につながる恐れがあります。

そのため、発電事業者は事前に発電計画を作成・報告し、「計画値と実績値を一致(バランシング)」させなくてはいけません。差分が発生した際は、ペナルティとしてインバランス料金を支払います。

「FIT制度」では発電事業者にその責任(インバランス)を負担する義務がありませんでした。一方、「FIP制度」ではインバランスを支払う必要があります。現在は経過措置として、プレミアム算定において「バランシングコスト」が考慮されています。
蓄電池の活用
再生可能エネルギーのひとつである水力発電は、短時間で発電開始/停止することができます。また、バイオマス発電も発電のタイミングをコントロールできます。地熱も安定して発電できると言えるでしょう。

しかし、その他の再生可能エネルギーは天候に左右されるため、太陽光発電では夜間は発電できない、風が吹かない日は風力発電ができないなどの問題がおこります。

そこで注目されているのが蓄電池の活用です。太陽光発電が普及した現在では、太陽光が降り注ぐ昼の12時頃の電力市場価格は下がる傾向にあります。一方、太陽光の発電量が少ない朝晩は価格が上昇します。

「FIP制度」では発電事業者が自由に電気を売ることができるため、蓄電池に電気を貯めて価格の高い時間帯に売ることができれば収入がアップします。また、安定的な電気供給にも寄与します。
DXの活用
蓄電池の活用とも連動しますが、市場価格が高いときに売る、または安定的に電気を供給するためには発電量の予測技術が欠かせません。そのためには、気象予測システムから得られるデータをもとに、AIが発電量を精緻に予測し制御するなどDXの活用が推進されていきます。
アグリゲーター/バランシンググループの活用
アグリゲーターとは、発電事業者や需要家(電気使用者)を束ねる事業者のことです。「特定卸供給事業者」とも呼ばれライセンス制となっています。
「バランシンググループ」とは、複数の発電事業者がグループとなり売電をおこなうことを指します。

「バランシング」で説明した通り、電力は需要量と供給量を一致させなくてはいけません。従来はその役割を、皆さんがご存知の全国10の電力会社(旧一般電気事業者)が担っていました。しかし、電力自由化による「発送電分離」後は、需給バランスの調整も各事業者がおこなう必要があります。そこで活躍するのが、調整役としてのアグリゲーターやバランシンググループです。
発電事業者においては利益の最大化を図ると同時に、電力の長期・安定供給を担う存在としてアグリゲーターやバランシンググループの役割が注目されています。

FIP制度のメリット

需要家(電気使用者)にとってのメリット

「FIT制度」を用いて買い取られた電気の費用は、毎月の電気料金と併せて電気使用者から広く集められる「再生可能エネルギー賦課金(再エネ賦課金)」によってまかなわれています。

昨今の電力市場価格の高騰により、2023年度の再エネ賦課金単価は下がりましたが、電気使用者視点ではまだ負担が大きいと言わざるをえません。「FIP制度」も再エネ賦課金からプレミアムが支払われますが、その額は軽減されることになります。

発電事業者にとってのメリット

電気市場価格が下がっても、プレミアムにより安定的に事業運営することができます。また、市場価格と連動して1ヶ月単位で売買価格が見直されるため、蓄電池などを有効活用しながら戦略的に運用すれば、利益の最大化を図ることができます。

「FIT制度」の適用期限が過ぎた発電設備も、「FIP制度」に移行することで引き続き政府の支援を受けることができます。

FIP制度の課題

エネルギー価格高騰による 普及の遅れ

現在は安定してきましたが、「FIP制度」が導入された2022年は世界的なエネルギー危機により電力市場価格が高騰しました。このような状況になると、高騰した年は大幅に収入がアップしますが、翌年は(参照価格が高くなり計算上はマイナスになるため)プレミアム0円の月が増えてしまいます。

「FIP制度」は発電事業者の収益安定化を目指した制度であり、市場価格が下落する局面で力を発揮します。しかし、昨今の市場価格上昇やインフレを考慮すると、制度の複雑さもあり「FIP制度」に参加するのを躊躇する発電事業者も生まれています。

コーポレートPPAの拡大

コーポレートPPAとは、企業や自治体などの需要家が、発電事業者から直接再エネ電力を購入する契約(Power Purchase Agreement, PPA)を意味します。市場取引ではなく「相対取引」をおこなうということです。

発電事業者・需要家双方にとって、経営的にも電力需給においても長期・安定的に調達できるメリットがあります。また、市場価格よりも多少高くても、再生可能エネルギーの「環境価値」「CO2削減への取り組み」という点を加味すれば、適正または割安になる側面があります。

収益の見通し困難さが参入障壁に

2023年12月の着床式洋上風力発電事業者の入札において、入札評価のひとつである「価格点」で120点満点を獲得したコンソシアームが複数ありました。再エネ賦課金が発生しない「ゼロプレミアム水準」、3円/kWhで申請したのです。三井物産が参加するコンソシアームもそのひとつでした。

これは3円/kWhで市場に供給するという意味よりも、入札評価の「価格点」を満点にする側面が強いものです。コーポレートPPAによる相対取引によって、政府の補助がなくても利益の出せる売電収入が確保できるとも言えますが、そこに「絶対」はありません。
なお、洋上風力の導入は再エネ賦課金の大幅な増加が見込まれるため、国民や事業者の負担増大が懸念されていました。その課題に対し、FIPやPPAで再エネ賦課金の増加を抑えることで、洋上風力の導入を拡大できる可能性が生まれました。一方で、FIPやPPAでは、売電収入が確定しにくいという課題があるのです。

金融機関からの融資が受けにくい

従来の「固定価格買取制度(FIT)」は、各種リスクのないシンプルな制度でした。発電量のすべてを固定価格で買い取ってもらえるので、将来の収支予測が立てやすく、プロジェクトファイナンスを受けやすかったのです。

しかし、「FIP制度」は仕組みが複雑なうえ、長期・安定的な収益確保には高度なノウハウを必要とします。そのため収支予測が立てにくく、発電設備の新設において金融機関からの融資が受けにくいという課題があります。

再生可能エネルギーが 競争力のある電源になった

再生可能エネルギーの普及にはまだ多くの取り組みやイノベーションが必要ですが、エネルギー価格高騰やインフレにともなう電力市場価格の上昇により、再エネ電源の競争力が高まっています。それにともない、コーポレートPPAなどが活性化し、「FIP制度」の普及が遅れている側面もあります。しかし、当初の目的である「再生可能エネルギーの普及」「自立の促進」「新たな産業創出」が進んでいる証左であるならば歓迎すべきことかもしれません。

「FIP制度」は細かなルール改正の検討も進んでいます。それらを鑑みながら、さらなる再生可能エネルギー普及に向けた取組みをしていきましょう。

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