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ソリューション電池・水素

最終更新:2023.06.05

水素エネルギーとは?メリットや利用方法を解説!

水素エネルギーは、燃焼時に二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギーです。

この記事では、水素エネルギーとはどのようなもので、どのように生産されるか、水素エネルギーの利用方法、メリットや課題などについてまとめます。

水素エネルギーとは何か?作り方や利用方法を解説!

水素エネルギーとは、水素と酸素を反応させることで得られるエネルギーのことです。エネルギー資源として水素を利用する社会は、水素エネルギー社会あるいは水素社会と呼ばれます。
水素は、酸素と結合すると大きなエネルギーを生み出し、このエネルギーが発電などに利用されます。また、水素エネルギーの使用時に二酸化炭素を排出しないという特徴があり、化石燃料に代わる新たなエネルギーとして注目されています。
地球表面の水素原子のほとんどは、海水の状態で存在しており、水素エネルギーとして使用するには水素分子を工業的に製造しなければなりません。水素エネルギーは利用時にCO2を排出しませんが、工業的生産では化石燃料を使うことも多く、その際CO2を排出します。
しかし、将来的にはCO2を排出しない方法で、水素の大量生産が可能になると期待されています。日本でも、再生可能エネルギーを利用した水素製造の実証実験が行われており、二酸化炭素を排出しない水素の生産へ、着々と歩みを進めています。
水素エネルギーの工業的生産
水素エネルギーの作り方や利用方法については、以下でまとめます。

水素エネルギーの作り方

水素は様々な物質を構成する元素です。それら物質を化学的に分解することで水素を取り出すことが可能であり、その方法は多岐にわたります。
工業的には、水の電気分解や天然ガスの化学分解といった生産方法が用いられます。
水を電気分解する場合、真水は電気を通さないので水酸化カリウム等の電解質を混ぜてから電気分解します(固体高分子電解法)。また、海水を使って食塩を取り出す際にも水を電気分解する方法が用いられるため、製塩時の副産物として水素を得ることも可能です。
天然ガスの化学分解では、天然ガスに含まれるメタン(CH4)などを水蒸気と反応させることで水素を取り出します。ただし、天然ガスから水素を取り出す場合は、これらの混合ガスから水素だけを得るための機械が必要です。
これらの方法以外には、天然ガスの化学分解と似たような方法で、高温でバイオマスを分解し、発生したガスを水蒸気と反応させることで水素を得る方法も実用化されています。

水素エネルギーの種類

水素エネルギーは利用時にCO2を排出しないことが大きな利点ですが、製造方法によっては、その製造過程でCO2を排出します。そのため、気候変動対策の観点から、後述するCO2排出量が少ない「ブルー水素」、「グリーン水素」が注目されています。
石炭や天然ガスといった化石燃料を水蒸気と反応させて生成する水素は「グレー水素」と呼ばれます。グレー水素は、化石燃料を用いるためその生成過程でCO2が排出されます。
グレー水素

現在生産されている水素の95%以上がグレー水素となっていますが、将来的にはグレー水素の割合を減らしていく必要があると考えられています。
ブルー水素

グレー水素の製造過程で生じたCO2を、CCSと呼ばれる貯留技術を用いて地中に閉じ込めようという試みが検討されています。CO2を地中に留めることで、CO2の排出がないものとみなすことができ、このような製造方法で作られた水素を「ブルー水素」と呼称します。
ブルー水素生産にはまだまだ課題が多いですが、少しずつ実用化されつつあります。
グリーン水素

「グリーン水素」は、水の電気分解などの方法を用いて水素を製造する場合に、製造工程で必要なエネルギーを、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーで賄うことで作られた水素を指します。こうして作られた水素は化石燃料を消費することもなく、CO2を大気中に放出することもありません。

水素エネルギーの主要な利用方法とは?

水素エネルギーは主に燃料電池で利用されおり、代表的な燃料電池式発電機が「エネファーム」です。2009年に販売開始された家庭用燃料電池エネファームは、広く一般に普及しています。2019年11月の経済産業省「水素社会実現に向けた経済産業省の取組」によれば、エネファームは28万台が普及しており、2030年までに530万台を普及させる計画です。
他にも燃料電池は、自動車の駆動にも用いられます。燃料電池で発電して動力を得るのが「燃料電池自動車(FCV)」です。燃料電池自動車は走行時にCO2を出さないクリーンな自動車であり、日本でも開発・販売されています。
首都圏では、水素エネルギーを利用した「燃料電池バス(FCバス)」が走行しており、また「燃料電池トラック(FCトラック)」、「燃料電池スクーター(FCスクーター)」など多くの乗り物に活用されています。
燃料電池自動車(FCV)は、経済産業省「水素社会実現に向けた経済産業省の取組」によれば、2030年までに80万台を普及させたい計画です。
燃料電池自動車について、詳しくは「燃料電池車(FCV)とは?その仕組みと水素エンジン車・EVとの違い」をご覧ください。
燃料電池自動車(FCV)は、海外でも開発・販売されており、例えば三井物産が出資参画するポルトガルのCaetanoBus社では、電動バス(EVバス)・水素燃料電池バス(FCバス)の製造・販売を行っています。加えて車載用電池パックなどの基幹部品の提供、使用済み電池を蓄電池としてリユース・リサイクルする仕組みを含むエコシステムの構築、電池を活用したエネルギーマネジメントを含む移動サービスの提供なども行っています。
詳しくは「電池・水素」を御覧ください。

水素エネルギーのメリットと課題を解説!

水素エネルギーのメリットとして、環境負荷が低いことが挙げられます。既に説明したとおり、水素は燃焼時にCO2を排出しません。燃料電池として利用する場合も、水素と酸素を用いて電気を取り出し、水のみを排出します。
現在は、化石燃料から水素を生成する方法が一般的で、その製造工程でCO2を排出します。しかし、今後製造工程で必要なエネルギーを再生可能エネルギーで賄うことができるようになれば、CO2を排出しない水素エネルギーを得られるようになります。
余剰電力があるときに水を電気分解して水素を生産・貯蔵しておき、電力が不足したときに水素を使用して発電を行うことができます。また、水素は熱エネルギーとしても利用が可能です。
ただし、水素には金属を侵食・脆化させる働きがあるため、天然ガスなどと同じような貯蔵方法を採ることができません。水素の貯蔵には専用の容器が必要となり、これら周辺設備が水素利用に係るコスト負担の一要因となっています。
また、エネルギー効率が高いということは、事故の際の被害が大きくなりやすいということでもあります。ガソリン等と同様、水素による事故の危険性がゼロとは言えません。水素を正しく安全に管理するために、水素を「漏らさない」、漏れた場合に「検知する」、「漏れた水素を停留させない」ことが大切になります。
また、水素はエネルギー効率が高く、貯蔵できるエネルギーとして期待されています。加えて、水素は様々な資源から生成できますので、エネルギー資源に乏しい日本では、エネルギー調達を輸入に頼る必要がなくなる可能性があるという点で注目されています。
一方で、水素エネルギーの課題としては、水素サプライチェーンが充分に整備されていないことが挙げられます。
水素は、気体の状態では体積あたりのエネルギー密度が低く、貯蔵には大容量のタンクを必要とします。また液体の状態を維持するには、-253℃の超低温を保つ必要があるため、貯蔵・輸送効率が高いとは言えません。
また、水素を供給する「水素ステーション」の設置が一部で始まっているものの、十分に行き届いている状態ではありません。
水素は、需要側として燃料電池自動車(FCV)などの普及拡大を図りつつ、供給側ではサプライチェーンを構築し、水素の安定供給を図っていくことが課題であると言えます。

水素エネルギーの将来性とは?企業の事例を紹介!

最後に、水素エネルギー活用に携わる企業やプロジェクトを紹介します。
液化水素の輸送に関する実証実験

日本の「次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合(AHEAD)」の「有機ケミカルハイドライド法による未利用エネルギー由来水素サプライチェーン実証実験」の一環で、2019年にブルネイの水素化プラントで製造した水素を、常温・常圧下で液体の形で日本へ輸送し、日本で気体に戻して需要家に供給する実証実験が行われています。
液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」

「 CO2 フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」に所属する川崎重工は、2019年に世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」を製造し、同年12月11日に進水式を行いました。
「すいそ ふろんてぃあ」は、品質や輸送面の問題からこれまで活用が難しいと言われていた低品質な石炭である「褐炭」を水素の原材料に用いる「褐炭水素プロジェクト」で利用される運搬船であり、オーストラリアで褐炭から製造された水素を日本に輸送する計画です。
水素製造・貯蔵システム「Hydro Q-BiC」

清水建設と国立研究開発法人産業技術総合研究所は共同で、余剰電力を水素に変えて貯蔵するシステム「Hydro Q-BiC」を開発しました。
「Hydro Q-BiC」では、再生可能エネルギーによって作られた余剰電力利用して、水を電気分解することで水素に変えて、水素吸蔵合金に貯蔵します。
水素サプライチェーンの構築

水素利用を広く普及させていくためには、グリーン水素を製造するための再生可能エネルギーによる発電事業、パイプラインの敷設や水素タンクといった貯蔵・輸送手段の確立、水素を需要家に供給する水素ステーションの設置など、多くの分野との連携が欠かせません。
三井物産では、欧米を中心にグリーン水素製造、高圧ガスタンクの製造販売、水素ステーション事業、またこれらをつなぐサプライチェーンの構築に取り組んでいます。
詳しくは「電池・水素」をご覧ください。
以上のように、水素エネルギーを活用する水素社会を実現すべく、様々な実証実験が行われています。
水素は電気や熱エネルギーとして変換する際に二酸化炭素を排出しないことから、クリーンなエネルギーとして、今後の活用が期待されています。
また、水素は、資源の乏しい日本にとっては、輸入に頼らないエネルギー資源として注目されています。

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