CO2排出量の計算方法・段取りを解説! いますぐ可視化が必要な理由とは? - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

ソリューション可視化

最終更新:2024.11.19

CO2排出量の計算方法・段取りを解説! いますぐ可視化が必要な理由とは?

CO2排出量可視化のためにはどのような段取りが必要で、どのように計算していくのかを解説していきます。また、いま企業にCO2排出量の可視化が求められている理由も紹介していきます。

▼本記事に関連するソリューションはこちら

1.なぜCO2排出量を計算する必要があるのか?

2016年に発効したパリ協定。そこでは「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」ことが世界共通の目標とされ、各国の温室効果ガスの排出削減目標が合意されました。これを契機に各国が脱炭素化に向けた取り組みを加速しています。
事業者等は自社のCO2排出量、削減目標、削減に向けた取り組みをステークホルダーと共有し、一体となって脱炭素化を推進していくことが求められています。

パリ協定で合意した削減目標の達成に向けた 排出量の報告義務

パリ協定で合意した日本の削減目標は、「2030年までに2013年度比で温室効果ガスを26%削減し、2050年までに80%削減」することです。これは国際社会との約束であり、この削減目標を達成すべく、国内ではいくつかの法律を制定、CO2排出量を報告すると共に脱炭素化に取り組んでいくことが義務付けられています。
地球温暖化対策推進法(温対法)
一定のエネルギー使用量のある事業者*は、温室効果ガスの排出量を自ら算出して国に報告することが義務づけられています。
*エネルギー使用量が原油換算で1,500kl/年を超える企業や、二酸化炭素換算で3,000t/年以上かつ事業者全体で常時使用する従業員21人以上が対象
エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)
一定のエネルギー使用量のある事業者*は、エネルギー使用状況等の定期報告義務、非化石エネルギーの使用目標を提出することが義務づけられています。同時に、エネルギーを使用するすべての事業者に対して努力義務を課しています。(2023年4月施工の改正省エネ法)
*エネルギー使用量が原油換算で1,500kl/年を超える企業。運送分野においては、鉄道300両、トラック200台、バス200台、タクシー350台、船舶2万総トン(総船腹量)、航空9,000トン(総最大離陸重量)​​の輸送能力を有する事業者が対象

TCFDが推奨する金融機関や株式市場への気候変動に関する情報開示

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)は、G20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)により設立されたタスクフォースです。気候変動が企業経営のリスクとなり、ひいては金融機関の脅威になるとの懸念から、企業等に気候変動に関する情報開示を推奨しています。
近年、投資家は気候変動に関する情報開示を一つの参考として投融資判断を行うようになっています。つまり、企業は投融資を呼び込むためにも気候変動対策についての適切な情報開示が必要となっています。
TCFDに賛同する日本企業は、2023年10月12日時点で1,470社(世界1位)。また、東京証券取引所のプライム市場では、上場企業にTCFDに準拠した報告を強く推奨しています。

取引先から求められる排出量報告と排出削減要請(サプライチェーン排出量)

事業者の多くは、自社からの排出のみならず、事業活動に関わるサプライチェーン全体での排出量を計算し、削減することが求められています。その中では、サプライヤーに対してCO2排出量の報告やCO2排出削減を要求する事業者もあり、サプライヤーの立場からは、取引先に自社の排出量を報告する必要性が生じています。
例えば、Apple 社は2020年10月、部品調達先などのサプライヤーに対して、2030年までにカーボンニュートラルを達成することを求めています。これが実現できない場合、Apple社との取引が停止されるリスクを内在することとなります。

自社の排出削減に向けて、主要な排出源を特定する

脱炭素化を進める最初のステップは排出量の可視化です。排出削減を効果的に進めるためには、自社のどこからどの程度のCO2が排出されているのか、その主要な排出源を特定することが重要で、排出源が特定できれば適切な削減施策を実施することが可能となります。
※脱炭素の取組み方法についてさらに知りたい方は「脱炭素の正しい進め方と考え方」をご参照ください。

2. CO2排出量計算における対象範囲

CO2排出量の計算にあたっては、主要なアプローチとして「サプライチェーン排出量」の算定と「LCA(ライフサイクルアセスメント)/カーボンフットプリント」の算定の2つの方法があります。前者は国際的な基準「GHGプロトコル」が規定されており、そこではサプライチェーン排出量が重視されます。後者はISOにより計算方法のガイドラインが示されています。
CO2排出量の計算にあたっては、自社からの排出のみならず、サプライチェーン全体での排出量(LCAの場合にはライフサイクル全体での排出量)を計算し、全体で排出削減に取り組むことが重要となります。

サプライチェーン排出量

自社からの排出のみならず、事業活動に必要なサプライチェーン全体での排出量を計算します。排出源に応じてScope1、2、3と区分され「サプライチェーン排出量 = Scope1 + Scope2 + Scope3」となります。原材料の調達-製造-使用-廃棄に至るまでの排出量を事業所単位で計算することから、「組織のLCA」とも呼ばれます。
また、サプライチェーン排出量の中でもscope3については、15のカテゴリーが定義され、カテゴリーごとに排出量の計算方法についてのガイドラインが示されています。
※Scope3についてさらに知りたい方は「Scope3とは?全15カテゴリの内容やCO2排出量の算定方法を紹介!」をご参照ください。

LCA(Life Cycle Assessment)/ カーボンフットプリント

製品やサービスのライフサイクル全体(原料調達-生産-物流-使用-廃棄)、または特定の段階での環境負荷を評価します。LCAは本来、ライフサイクル全体での環境負荷を網羅的に評価するものであり、環境負荷をCO2排出量に限定したものは「カーボンフットプリント」とも呼ばれます。
LCAはISO14040シリーズにより規格化されていますが、具体的な排出量の計算方法やガイドラインは示されておらず、LCAをおこなうためには専門家のサポートが必要な場合があります。日本では「SuMPO:一般社団法人サステナブル経営推進機構」が国内唯一のカーボンフットプリント認証機関として知られています。
※LCAについてさらに知りたい方は「LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?メリットや事例をご紹介」をご参照ください。
なお、「カーボンフットプリント」とは製品が製造され、使用・廃棄されるまでのCO2排出量を表示したものと言い換えることができます。対象製品がどれくらいのCO2を排出しているかを消費者に伝えやすく、これをラベル表示することで消費者のグリーン購入やエシカル消費を促進したり、BtoC商品のマーケティングに利用することもあります。

3.CO2排出量の具体的な計算方法

簡易的に排出量を計算するには:排出量 = 活動量 × 排出原単位

温室効果ガスの排出量は簡易的に、「CO2排出量 = 活動量 × 排出原単位」で計算することができます。
「活動量」とは、使用した原材料の量、生産時のエネルギー利用量、輸送量や廃棄量などを指し、実際の使用量を計測する必要があります。
「排出原単位」とは、原料やエネルギーごとに規定された単位当たりのCO2排出量。例えば、電力の排出原単位は0.0682kgCO2e/kWh(環境省 環境負荷原単位データブック)となっています。これは電力のライフサイクル全体でのCO2排出量であり、電気がつくられ、使用されるまでの単位当たり排出量を示しています。
このような「排出原単位」は、データベースとして各所で整理されており、日本の代表的な排出原単位のデータベースには、IDEA、環境負荷原単位データブック、JLCAデータベースなどがあります。

精緻な排出量を計算するには:CO2排出量の実測値を用いる

「排出原単位」は、対象となる原料等の単位当たりCO2排出量を規定したものです。しかし、そこで規定された数値は、一般的な方法で電気が作られた場合の排出量や、特定地域で作られた電力の平均の排出量といった形で規定されます。
例えば、エネルギー事業者において自社での電力の製造方法に工夫がある場合、同じ電力でも排出量が変わるため、「精緻な排出量」を計算しようとする際は、それらの工夫を考慮して排出原単位の数値を調整する必要があります。つまり、最終的には実際のCO2排出量を計測する必要性が出てきます。
それらのデータは「1次データ」とも言われ、精緻な排出量の計算には実測値を用いることが必要ですが、データ収集の難易度が高くなることから、まずは簡易的に排出原単位を用いた計算をおこなうことが推奨されます。

CO2排出量計算における流れ

CO2排出量の計算は、以下の流れで実施されます。
1.目的および調査範囲の設定
何のために排出量の計算をおこなうかにより、求められるデータの精度や収集・計測方法が変わるため、事前準備として目的と調査範囲を設定します。
「LCA」であれば、原材料調達-生産-流通-使用--廃棄といったライフサイクルフローに基づきます。
「サプライチェーン」であれば、規定されたscope3の15カテゴリーに基づき調査範囲を設定します。
2.インベントリ分析
ライフサイクルの各段階や、scope3のカテゴリー別に、インプットデータとアウトプットデータの一覧を作成し、CO2排出量を計算します。
「インプット」とは、原材料・電力・燃料など投入する資源やエネルギーを指します。
「アウトプット」とは、廃棄物やCO2の排出量を指します。
ここで、簡易的には排出原単位、精緻に計測が必要な場合は実測値を用います。
3.結果の分析と評価
インベントリ分析をもとに、ホットスポットの特定や排出量の傾向、削減可能な領域などを評価します。LCAの場合は同時に、地球温暖化や大気汚染など環境にどのような影響を及ぼすのかも評価していきます。
4.結論・改善策の策定
インベントリ分析と影響評価の結果から、調査の目的を踏まえ結論や今後の改善策をまとめます。

4. 三井物産の排出量可視化ソリューション

三井物産では、3つの可視化ソリューションを中心として、事業者等のCO2排出量の算定を支援しています。目的に応じて、最適なソリューションを提案します。また、排出量可視化後のソリューションも揃えており、排出源を特定した後に、事業者に最適な削減ソリューションのご提案が可能です。

関連する記事

関連ソリューション

ご質問やご相談など、
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォームはこちら