LCA(カーボンフットプリント)算定結果の「妥当性確認・検証サービス」が始動 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

ソリューション可視化

最終更新:2023.11.01

LCA(カーボンフットプリント)算定結果の「妥当性確認・検証サービス」が始動

「LCA Plus」では、2023年7月よりLCA算定結果の「妥当性確認・検証サービス」を開始しました。経済産業省/環境省より示された「カーボンフットプリント ガイドライン」にて、LCA算定における今後の課題として示された「客観性」と「正確性」の検証を、既存の認証サービスよりも早く、手軽に提供し、製品単位のLCA(カーボンフットプリント)算定をサポートしていきます。

製品単位のLCA(カーボンフットプリント)算定プラットフォーム「LCA Plus」が、算定結果の妥当性を検証する「妥当性確認・検証サービス」を提供開始。ここでは、同サービスのユーザであるクボタおよび同社のサプライヤーである東京製鐵から、LCA(カーボンフットプリント)における第三者検証の有用性やLCA Plusの魅力について話を伺いました。

脱炭素社会の実現に向けてグローバルに取り組むクボタ

――それぞれの会社概要とカーボンニュートラルへの取り組みを教えてください。
宮川(クボタ)  クボタは世界120カ国以上で事業を展開、従業員数は5万人を超えるグローバル企業です。農業機械や水処理施設を提供する当社は、ブランドステートメントやミッションにも掲げているように、事業が地球環境と密接な関係を持ち、カーボンニュートラルの実現に向けて、環境問題にも積極的に取り組んでいます。
宮川(クボタ)  カーボンニュートラルの実現に向けては、自社内でのCO2排出削減のみならず、当社が提供するソリューションを通じて取引先が脱炭素化を推進できるよう、スマート農業、スマートウォーターソリューション、資源循環ソリューションなどを展開しています。
株式会社クボタ 産業機材事業部 産業機材事業推進部 宮川詩織メーカーでの経理担当を経て2021年にキャリア入社。水環境総括部での総括業務を経たのち、2023年より現職にて鋼管製品に関わる企画業務を担当。
株式会社クボタ 産業機材事業部 産業機材事業推進部 宮川詩織
メーカーでの経理担当を経て2021年にキャリア入社。水環境総括部での総括業務を経たのち、2023年より現職にて鋼管製品に関わる企画業務を担当。

CO2排出量の少ない鉄鋼材(電炉材)でトップシェアの鉄鋼メーカー 東京製鐵

有賀(東京製鐵) 東京製鐵は国内では第4位の鉄鋼メーカーで、売上は約3,600億円、1,000名ほどの従業員が働いています。国内に4工場を有し、その生産量は約340万トンですが、鉄スクラップを主原料とする電炉材メーカーとしては国内最大手になります。

再生資源である鉄スクラップを主原料とする鉄鋼材(電炉材)は、天然資源である鉄鉱石・石炭を主原料とする鉄鋼材(高炉材)と比べて排出されるCO2が大幅に少ないメリットがあります。高炉材1トンを製造する過程においてのCO2排出量は約2トンですが、電炉材1トンの製造ではCO2排出量は約0.4トンまで抑制することができます。

鉄鋼業界は最もCO2排出が多い産業の一つであり、その排出量は我が国全体の約13%を占めます。そのため、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて大幅な排出削減が求められています。当社は国内最大手の電炉材メーカーとして、H形鋼(鉄骨)をはじめ、自動車、家電、建築など幅広い用途にCO2排出量の少ない電炉材を供給し、また同時に鉄スクラップの資源循環を拡大することを通して、これに貢献しています。
東京製鐵株式会社 総務部総務課 有賀優2015年東京製鐵入社。東京本社に配属され、建材製品の販売部門、ゼネコン・設計事務所などへの技術営業部門を経験。2019年より現部署にて環境戦略の立案・実行や気候変動関連の情報開示などを担当。
東京製鐵株式会社 総務部総務課 有賀優
2015年東京製鐵入社。東京本社に配属され、建材製品の販売部門、ゼネコン・設計事務所などへの技術営業部門を経験。2019年より現部署にて環境戦略の立案・実行や気候変動関連の情報開示などを担当。

LCA(カーボンフットプリント)算定に求められる「正確性」と「客観性」

――今回、クボタと東京製鐵で検証の実証実験を行うに至った経緯を教えてください。
岩佐(LCA Plus) LCA PlusはLCA(カーボンフットプリント)算定のプラットフォームとして、2022年3月よりサービスを開始し、現在までに多くのお客さまがLCA Plusを利用して製品単位でのCO2排出量(カーボンフットプリント)を自主算定しています。

経済産業省と環境省により示された「カーボンフットプリント ガイドライン」(2023年3月)では、今後の算定における課題として「客観性」と「正確性」を高めていくことが求められました。「客観性」においては算定結果の外部検証をおこなうこと、「正確性」においては排出原単位のデータベース、いわゆる二次データを用いた算定から、実測値(一次データ)を用いた算定に転換していくことが必要とされています。

このような背景もあって、LCA Plusでは第三者検証サービスを開始しました。今回のクボタおよび東京製鐵との取り組みはこの第三者検証の一環で、クボタ製品の鋼管杭がそのライフサイクルで排出するGHGを算定、その算定結果を三井物産が検証するものです。さらに、同鋼管杭の主原料は東京製鐵の電炉材であり、その一次データを用いることで排出量算定結果の正確性を高めようとするものです。
三井物産株式会社 次世代事業推進部 グリーンスチールイニシアチブ推進室 室長補佐 岩佐達朗2007年三井物産入社。鉄鋼製品物流、海外店(台湾)勤務、新規事業立上げ、事業撤退案件等を幅広く経験。2023年8月からLCA Plus事業のプロジェクトマネージャー。多くのお客様が「正確簡便な製品単位算定」を実現できる社会の実現を目指し奮闘中。
三井物産株式会社 次世代事業推進部 グリーンスチールイニシアチブ推進室 室長補佐 岩佐達朗
2007年三井物産入社。鉄鋼製品物流、海外店(台湾)勤務、新規事業立上げ、事業撤退案件等を幅広く経験。2023年8月からLCA Plus事業のプロジェクトマネージャー。多くのお客様が「正確簡便な製品単位算定」を実現できる社会の実現を目指し奮闘中。
――どのような流れで検証をおこなったのでしょうか。
岩佐(LCA Plus) まず東京製鐵に、電炉材のCO2排出量の算定に関するデータをLCA Plusで作成・登録いただきました。その一次データを用いてクボタが自社製品である鋼管杭のCFP(カーボンフットプリント)を算定。これを三井物産のLCA Plusチームが、正しい方法で算定されているかを外部検証していきました。
――鋼管杭でCFP算定をおこなった理由を教えてください。
宮川(クボタ) 鋼管杭は建物や橋など、さまざまな建設構造物を支える基礎杭として、広く使用されています。その鋼管杭でのカーボンフットプリントを適切に示し、CO2排出量の少ないこの製品を広めていくことが、ひいては建設業界のカーボンニュートラルに貢献すると考えました。
有賀(東京製鐵) 当社の電炉材は、従来の鉄鉱石や石炭を主原料とする高炉材と比べると、CO2排出量の少ない鉄鋼材です。その排出量データを、多くの事業者が利用するプラットフォーム「LCA Plus」に一次データとして登録することで、より多くの利用者が電炉材の優位性を認知し、CO2排出削減の選択肢の一つとして電炉材の採用を検討いただけるのではないかと考えました。

既存の認証サービスよりも手軽な LCA Plusの「妥当性確認・検証サービス」

――LCA Plusに興味を持ったきっかけを教えてください。
宮川(クボタ) 当社では、自社内での排出量算定ではなく、サプライチェーン排出量の算定について、どのように算定・公表するかについて検討していました。LCA Plusはその算定プラットフォームとして、製品単位でのCO2排出量が算定できることに加え、公的認証より早く、手間と費用がかからずに外部検証ができる点が魅力でした。
有賀(東京製鐵) 昨今の環境意識の高まりにより、CO2排出量の少ない電炉材への関心が高まっています。当社でも、サプライチェーン排出量の削減に取り組む自動車メーカーや建設会社といった取引先から、当社製品のCO2排出量データを開示するよう要請されることが多くあります。

既に一部の製品では第三者機関によるCO2排出量の認証を受け、取引先へ情報開示をおこなってきましたが、認証に必要な作業や費用面の問題から、より手軽な算定ツールを求めており、そこにLCA Plusがフィットしました。
岩佐(LCA Plus) 我々が「妥当性確認・検証サービス」を開始した背景もそこにあります。LCA(カーボンフットプリント)の算定方法がわからないという事業者に対し、その算定プラットフォームを提供してきたLCA Plusですが、客観性と正確性が求められた際に、既存の認証サービスの煩雑な作業や費用が排出量算定の阻害要因とならないよう、「正確性」と「客観性」を第三者として手軽に素早く担保する。そのようなサービスが、LCA Plusの「妥当性確認・検証サービス」です。

LCA Plusでつながり、広がる脱炭素化の動き

――今後、LCA Plusに期待することを教えてください。
宮川(クボタ) 今回のCO2排出量算定と検証を通して、東京製鐵の電炉材が一般の高炉材よりも、CO2排出量において相当の優位性があることが一次データから明確にわかりました。このような信頼性の高いデータがLCA Plusに蓄積され、利用する事業者がますます増え、さらなる信頼を獲得していく、LCA Plusがそのようなプラットフォームになっていくことを期待しています。また、三井物産のグローバルネットワークがLCA Plusでつながることで、脱炭素に関するビジネスやソリューションが世界に広がっていくことも期待できます。
有賀(東京製鐵) CO2排出量を算定するのみならず、信頼性の高い一次データがLCA Plusに蓄積され、それを見たユーザが環境負荷の低い製品を選択的に購買していく。そのようなマッチング機能が拡大していくことを期待しています。サプライヤーの立場としては、環境性能の良い製品やソリューションをアピールする場となり、多くの企業の目に留まることでビジネスチャンスが創出されると考えています。
岩佐(LCA Plus) 今回は「妥当性検証サービス」を中心に紹介しましたが、LCA Plusでは、これから製品単位の排出量を算定したいお客様から、外部検証を必要とするお客様まで、排出量算定におけるさまざまなソリューションを提供していきたいと思います。
――本日はありがとうございました。
LCA Plusは製品単位のLCA/CFP算定ソフトウェア及び算定支援サービスを提供しています。まずはお気軽にご相談ください!

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