【脱炭素経営EXPOレポート】みずほと資本提携したe-dash。サービス拡充を進めるLCA Plus
三井物産が提供するCO2排出量可視化ソリューション「e-dash」と「LCA Plus」が、「第4回 脱炭素経営EXPO 春」に出展しました。本レポートでは、展示パネルなどから見えた新しい取組みや担当者インタビュー、さらにはセミナーの模様をお届けします。
東京ビッグサイトにて、2024年2月28日~3月1日に開催された「第4回 脱炭素経営EXPO 春」。カーボンニュートラルを実現する最新技術が一堂に会する「スマートエネルギーWEEK」と同時開催され、累計で6万9000人を超える入場者で賑わいました。
e-dash、三井物産、みずほフィナンシャルグループによる共同出展
今回、CO2排出量可視化のクラウドサービス「e-dash」は、三井物産、みずほフィナンシャルグループと3社で共同出展。これは、2024年2月13日に4社による資本業務提携を締結(発表は2月20日)したことに起因します。会期中には3社共催セミナーも開催されました。
登壇したのは、みずほフィナンシャルグループ 兼 みずほ銀行の末吉光太郎氏、三井物産の生澤一哲氏、e-dashの山崎冬馬氏の3名。
ブース内には、資本業務提携の目的である「産業構造の転換で、日本の脱炭素化を加速する」というキーワードが大きく掲げられていました。
「銀行にとっての脱炭素化とは、自社だけでなく、投融資先のお客さまが排出するGHGの削減そのものです。我々自身も2050年ネットゼロにコミットしています。そのためには、お客さま、さらにはそのバリューチェーン全体でのCO2排出量を可視化していただき、削減していく必要があります。これまではGHG削減はコストだとして進まない局面もありましたが、脱炭素化への移行(トランジション)はビジネスチャンスを掴むことだとお客さまにお伝えしています。
2022年よりe-dashと業務提携をおこない、広くお客さまに提案していくなかで、中堅・中小の方から大企業まで誰でも再現性をもって使える、プロダクトのデザイン力があると理解しました。次の世代により良い社会を残していくため、我々は産業構造を変えていかなければいけません。そこに向けては、e-dashさらには親会社である三井物産のデザイン力が必要になると思い資本業務提携に至りました」(みずほフィナンシャルグループ 兼 みずほ銀行 末吉光太郎氏)
「投資をしたものから利益が返ってくる財務リターンも大事です。しかし、それ以上に重要なのが戦略的リターン。e-dash・三井物産と一緒にやっていくことで、我々が目指す産業の構造転換が実現できると考えています」と語った、みずほフィナンシャルグループ 兼 みずほ銀行 サステナブルビジネス部 副部長 末吉光太郎氏
「欧米諸国に比べて日本の脱炭素化は遅れているという話があります。しかし、これまで海外のさまざまな脱炭素ソリューションや技術を見てきましたが、日本にも優れたサービスやソリューションはたくさんあります。
手前味噌ですが、e-dashのUI/UX、可視化の先にあるソリューション、ファイナンスも含めた削減に向けての支援などは、先進的で洗練された取組みだと自負しています。世界では、脱炭素化の取組みがこれから加速していく地域もありますので、三井物産のネットワークを活かして、みずほフィナンシャルグループと共に世界へと広げていけるような事業にしていきたいと考えています」(三井物産 生澤一哲氏)
三井物産 エネルギーソリューション本部 Sustainability Impact事業部 新規開発室 室長 生澤一哲
「以前、末吉さんがステークホルダー資本主義と言われていましたが、この20~30年で企業を見る目が一変していくと思います。CO2排出量やESG情報開示が当たり前となり、それはサプライチェーン全体の商習慣になっていく。この3社のタッグを持ってすれば、そのような大きな変革に貢献できると思っています。
今回、資本業務提携の中で総額25億円を調達しました。大上段をお話ししましたが、一方でまずは足もとにあるニーズ。GHG排出量の可視化、報告、計画作成支援、削減支援、そのいずれの部分でもお客様のエクスペリエンス向上に取り組んでいきたいと思います。また、脱炭素に対する意識が高まってきましたが、日本社会全体に届いているかといえば、まだまだです。今後は、我々のサービスの価値をお客様に広く伝えることにも、貴重な資金を使わせていただければと考えています」(e-dash 山崎冬馬氏)
e-dash 代表取締役社長 山崎冬馬
みずほ銀行のファイナンス、三井物産のグローバルネットワーク、e-dashのデザインとソリューション。3社の資本提携は、異なる3つのスキルを兼ね添えた選手を意味する「トリプルスレットの誕生」とも表現されました。
可視化したうえで その先の機能も充実
e-dashのブースにおいては、請求書の画像データをアップロードするだけで可視化できる「e-dash」の魅力をわかりやすく提示。省エネ法定期報告が簡便におこなえる「省エネ法定期報告 via e-dash」 や、「e-dash Carbon Offset」において提供を開始したグリーン電力証書といった新しいサービスも紹介されていました。
また、開催期間中には岐阜信用金庫と共同で実施する「ぎふしんサステナビリティ・リンク・ローン」が、日本経済新聞社主催「NIKKEI脱炭素アワード2023」のプロジェクト部門 大賞受賞という嬉しいニュースも。こちらは、e-dashを使うことでサステナビリティ・リンク・ローンの申請を簡素化し、中小企業でも展開できる画期的な仕組みです。
お客様のお困りごとを すっきりとわかりやすく提示した「LCA Plus」
製品の調達・購買、生産、物流、使用、リサイクルまでを含めた製品・サービス単位での排出量を把握する「製品LCA(ライフサイクルアセスメント)」の管理をワンストップで実現できるプラットフォームサービス「LCA Plus」も多くの来場者で賑わいました。
展示ブースでは、LCA Plusの機能をストーリー仕立てでわかりやすく構成。LCA/CFP(カーボンフットプリント)算定における多くの方の悩みを、大小関わらず解決できるように工夫していました。また、利用企業のロゴを展示することで、信頼性の高いサービスであることがすぐにわかるようになっていました。
注目の新サービス「算定報告書自動作成」と「算定業務アドバイザリー」
新たな機能として注目されるのが「算定報告書自動作成」。これは、ボタン一つで、算定結果に基づいた報告書が簡単に作れるという画期的な機能です。また、LCA算定には社内環境の整備が必要です。新たなオプションサービス「算定業務アドバイザリー」では、自社やサプライヤーからどのようにデータを集め、どのような体制を構築すれば良いのかをコンサルティングします。
来場者の話題は 欧州の製品単位LCA義務化
「今回、お客様の声として印象的だったのは“欧州電池規則への対応” や “CBAM対応”、“Catena-X連携” といった、いよいよ対応が迫ってきた欧州での製品単位算定義務化に関する話です。
製品単位算定業界は、法制度や社会インフラが未整備で、各社を取り巻く環境は変化の最中にあります。営業活動に直結する規制への対応として、自社が取組むべき課題への関心の高まりを感じています」
そう語ったのは、LCA Plus事業のプロジェクトマネージャーを務める岩佐達朗氏。
LCA Plus 事業推進チーム プロジェクトマネージャー 岩佐達朗
また、さまざまな来場者と直接コミュニケーションできる「脱炭素経営EXPO」では、毎回大きな気づきがあると言います。
「改めて気づかされた点ですが、CFP算定におけるお客様の取り組み状況が多様化し、それに伴ってご支援のニーズもさまざまなレベルに分かれてきたと感じています。以前は、製品単位算定にこれから取り組むというお客様が多かったですが、最近は “取引先からCFPを開示頂けない” “算定対象製品を増やしていきたいが、業務量が膨大で進められない” といった、取組みを進めてきたからこそ出てくるご相談が増えています」
その他、今回は日本国内のみならず、韓国、中国、台湾、インド、欧州など、海外からのお客様も多かったと言います。
「製品単位算定の体制構築は一朝一夕に成し遂げることはできません。LCA Plusでは、お客様の算定体制構築を最短距離でサポートいたします。
各社の算定体制のロードマップ策定から実現までを伴走する、“算定業務アドバイザリー”サービスも、お客様のニーズに合わせて複数展開しています。製品単位算定に特化し、いち早くソリューションをお届けしてきた我々だからこそ提供できる解決ノウハウを、今後もお届けしていきたいと思います」
e-dash × LCA plus 合同セミナー開催
会期中には、Scope1.2.3と呼ばれる企業単位の排出量を可視化するクラウドサービス「e-dash」と、製品LCAと呼ばれる製品単位の排出量を可視化するプラットフォームサービス「LCA Plus」が合同でセミナーを開催。それぞれのサービス特性をわかりやすく解説することで、来場者の注目を集めていました。
可視化の次へ 脱炭素化の前進を感じた「脱炭素経営EXPO」
第4回目を迎えた「脱炭素経営EXPO」。これまでと比べて、具体的な排出量削減のソリューションや、脱炭素に関わる人材教育を謳う企業など、脱炭素経営への取り組みの裾野が広がってきた印象がありました。また、来場者の職種やレベルも多様化し、各ブースの熱気はこれまで以上のものがあり、脱炭素化へ向けた日本の取組みは次のステージへと前進したことを強く感じました。
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