貨物の輸送状況を「FourKites(フォーカイツ)」で可視化。その先を見据える三井情報の独自戦略
「2024年問題」が叫ばれる物流業界。三井情報は貨物の輸送状況を可視化するプラットフォーム「FourKites (フォーカイツ)」を提供することで、到着遅延による損失や、環境に配慮した輸送手段の検討支援をおこなっています。その主な機能、さらには三井情報だからできるプラスαのサービスについて話を聞きました。
FourKites | MKI (三井情報株式会社)
FourKitesは、物流の輸送状況をリアルタイムにEnd to Endで可視化するReal-Time Transportation Visibility Platform(RTTVP)です。物流状況に関連するデータをクラウドに集約し、常に最新の物流状況を把握可能にします。
三井情報は、約50年にわたる豊富な業務知見と信頼性、最先端のICT技術、そして三井物産グループとの強固な連携を活かし、グローバルな視点での幅広いサービスとソリューションを提供しています。
「FourKites (フォーカイツ)」は、米国FourKites,Inc.が提供する物流可視化プラットフォームであり、2022年に三井物産が投資をおこない、2023年より三井情報が国内展開を開始しました。
グローバルで1500社を超える実績を持つFourKitesの機能や強みについて、「国際物流総合展」に出展していた三井情報 DX第二営業部の平間泰裕さんに話を聞きました。
サプライチェーンを一気通貫にリアルタイムで可視化
平間 FourKitesは、「物流貨物の輸送状況を一気通貫にリアルタイムで可視化」できるプラットフォームです。
国際輸送の貨物は、空運・海運・鉄道輸送・トラック輸送など、さまざまな物流手段・物流事業者を経由して運ばれています。従来、貨物の輸送状況というのは、各物流事業者のホームページや、電話、メールで確認することが必要でした。ゆえに、膨大な時間と手間がかかっていたわけです。
主な課題としては
●貨物の状況問い合わせが何十件と来て、その都度対応している
●情報やデータが分散しており、各社のフォームもバラバラなため情報共有に手間がかかっている
●船の遅れが原因でデマレージ(超過保管料)/ディテンション(返却延滞料)が発生してしまった。そういった問題が過去にどの程度発生していたか把握できていない
●貨物輸送におけるパートナー選択で、なんとなく今までと同じ航路を選んでいる
こういった課題を抱えている、製造業・流通業・フォワーダー(貨物の運送や輸出入業務を代行する事業者)の方々が多い状況です。これらは改善の余地があるコストですが、最大の要因はアナログ作業によるものです。
三井情報株式会社 DX第二営業部 平間 泰裕さん
FourKitesは、「各物流事業者とデータ連携」をおこなうことで、クラウド上にある一つのプラットフォームにあらゆる情報を集約することができます。そこには、物流事業者から提供される貨物毎の各種イベント情報、ETA/ATA(到着予定時刻/実際の到着時刻)、ETD/ATD(出発予定時刻/実際の出発時刻)、積み地/向け地といった情報だけではなく、AIS情報(船舶の位置情報)、トラックのGPS情報、天候情報、港の混雑状況といったものも集約されています。
画面上では、複数の貨物を同時に確認することができ、見たいコンテナをクリックすると、どこからどこに向かう貨物で、いまどこにあるのかがわかります。例えば海上輸送の場合、船会社のホームページに行くと出発したことまではわかりますが、海上のどこにいるかまではわかりません。しかし、FourKitesは海の上のどこにいるかマップ表示され、ルート変更にも気づくことができるなど、リアリティのある情報を得ることができます。
AIを活用したFourKites独自の到着予測時刻
平間 船会社による到着予測時刻とは別に、過去の航路データ・港湾の混雑情報・天候情報等を機械学習したAIによる、「FourKites独自の到着予測時刻」も算出できます。ふたつの予測を見比べることで、遅延リスクに備えることが可能です。
今後、その差が生じた理由を表示するなど、FourKitesが算出する到着予測時刻の信頼性を高めていければと考えています。
また、FourKitesはリアルタイムの「動静情報」を把握できるため、遅延している貨物やデマレージ/ディテンションの発生が近い貨物の確認も可能です。過去の発生回数もわかるため、直近の対応のみならず今後の改善策を考案することができ、コスト削減が期待できます。
さらに、過去の船会社および航路のデータ分析をする機能もあるため、今後の船会社や航路の選定の際も、少ない労力で輸送コストの削減につなげられます。
アップデートも常におこなわれており、主な例として「AIチャットボックス」が追加されました。世界的なインシデントの名称を入力すると、自動的に対象貨物を洗い出せる機能です。
これにより、ボルティモアの橋の崩落、パナマ運河の干ばつ、紅海でのコンテナ船拿捕の影響によるルート変更など、事故や事件の影響を受けている貨物をチャットボックスを使って一括抽出することができました。
各種輸送における「CO2排出量分析」もできる
平間 脱炭素関連においては、輸送ごとの距離と「CO2排出量分析」をすることができます。これにより、どんな輸送手段を使えば排出量を抑えられるかを分析できます。現在は距離の予測値もしくは実績値係数をかけて算出していますが、要望が高まれば、重量や速度、積載量などから測定することも将来的に考えています。
FourKitesのデータを活用し在庫最適化をサポート
この他にも多くの機能を有しているFourKitesですが、ここからは「国際物流総合展」出展の感想も含め、三井情報だからこそできるFourKites活用方法を聞きました。
――FourKitesを日本で導入するにあたり、苦心された点はどこでしょうか。
福間 FourKitesの日本語化対応と、サービス品質向上をしっかりおこなう点です。日本は高い品質を求めることで知られていますが、FourKites社は顧客や我々が要求するものに真摯に応えてくれています。
三井情報株式会社 DX第二営業部 部長 福間 透さん
――競合他社との差別化、三井情報の強みはどこにあるのでしょう。
福間 当社はFourKitesの販売代理店ですが、本業はSI(業務システムや基幹システムの設計開発)です。そのため、FourKitesのデータを活用しながらその他の製品と組み合わせ、データ分析やAIの知見をプラスすることで、より高度な価値を提供できる点にあります。これは、他競合ベンダーにはできない強みと考えています。
福間 一例ですが、物流の「在庫最適化」という要望は多くいただきます。これらの分析をおこなう場合、「調達物流」と「出荷物流」のデータはFourKitesのデータで把握できます。しかし、「在庫最適化」に必要なデータは発注データ、在庫データ、生産工程データ等、さまざまなデータが必要になります。そこはFourKitesのデータだけでは分析できません。
そこで、関連するデータを結合・可視化・分析させることで、「在庫最適化」ができるようになります。そのような仕組みを提供することや、将来的には「需給予測」や「販売トレンド予測」ができ、最適な「調達」や「生産」に結びつけるサプライチェーン全体の最適化を実現することで、我々の付加価値も上げられると考えています。
――FourKitesを活用すべき事業者の規模感はどれくらいでしょうか。
水沼 指標としているのは、海上輸送で年間2万コンテナ以上です。まずはお試しということで、ミニマムから始められる事業者も多いです。そこから徐々にトラッキング数を増やすというのがよくあるケースになっています。
三井情報株式会社 DX第二営業部 水沼 諭香さん
――「国際物流総合展」に出展された感想を教えてください。
福間 長く話を聞いていただける方が増え、興味・関心のあるお客様が多いという印象です。別の展示会にはなりますが、2023年に出展したときよりも「物流の可視化」に対する理解度が深まっているように感じました。
水沼 海外の荷物を扱っているお客様はとくに、欧米を中心として物流の可視化が広まっていることをご存知です。そのため、日本としても取り入れていきたいという声を多く聞きました。
――CO2排出量削減に関しては、物流業界においても意識の高まりを感じますか。
福間 そうですね。顧客自身がCO2排出量を管理・把握していこうという意識が高まってきています。そのような観点からも、FourKitesに注目されている方が増えています。Scope3に関連するデータは膨大ですので、物流部分だけでも一元管理したいという話はよくあります。今後、そういったことも積極的に取り組んでいければと考えています。
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